固定資産税評価額は本当の価値ではない?評価額以下でしか売れない不動産の実態と3つの理由

固定資産税の納税通知書には「固定資産税評価額」が記載されています。そのため、「この金額が不動産の価値なのだろう」と考える方は少なくありません。しかし、実際の売買価格(実勢価格)は固定資産税評価額と大きく異なるケースが数多くあります。

特に地方や過疎化が進む地域では、固定資産税評価額を大きく下回る価格でしか売却できない、あるいは買い手が見つからない不動産も珍しくありません。

この記事では、固定資産税評価額と実勢価格が大きくズレる理由や、実際の事例、売却前に確認すべきポイントについて詳しく解説します。

固定資産税評価額は「売れる価格」ではない

不動産には一般的に次の4つの価格があるといわれています。
・実勢価格
・固定資産税評価額
・路線価
・公示地価

この中で、実際に売買される価格が「実勢価格」です。

一方、固定資産税評価額は税金を計算するために市町村が定める評価額であり、市場で売れる価格とは別物です。

ところが、相続や離婚による財産分与、実家の売却などでは、固定資産税評価額を参考にしてしまう方も少なくありません。

しかし、この金額をそのまま不動産価値と考えるのは非常に危険です。

都市部と地方では評価額とのズレが違う

都市部では、一般的な住宅地であれば固定資産税評価額より高く売れるケースが多く見られます。

もちろん例外はあります。

例えば、
・極端に広い土地
・分譲開発が必要な土地
・利用しにくい形状の土地
などは評価額以下になることもあります。

しかし通常の住宅であれば、固定資産税評価額以上で売却できるケースが一般的です。

一方、地方では事情が大きく異なります。

人口減少や過疎化が進む地域では、固定資産税評価額より大幅に安い価格でしか売れないことも珍しくありません。

事例① 築49年の家なのに評価額170万円?

実際にあった相談事例では、築49年の木造住宅に固定資産税評価額約170万円が付いていました。

一見すると170万円の価値があるように思えます。

しかし、実際の査定では建物の価値はゼロどころか「マイナス評価」でした。

建物の解体費用が価値を下回る

築年数が古い住宅は、そのまま利用できないケースが少なくありません。

さらに地方では、
・建物の解体
・ブロック塀の撤去
・樹木の伐採
・廃材処分
などが必要になります。

木造30坪程度の住宅でも解体費は150万円前後。
塀や庭木まで撤去すると200万~250万円程度かかることもあります。

つまり、
・建物評価:170万円
・解体費:250万円
となれば、建物だけ見れば約80万円のマイナスです。

土地に価値があれば相殺できますが、土地価格が低い地域では実質的にマイナス資産となることもあります。

事例② 建物が建て替えできない土地

もう一つの事例は、市街化調整区域にある農家住宅です。

この土地は、農家として特別な許可を受けた人だけが住宅を建てられる土地でした。

現在の所有者には価値がありますが、第三者が購入しても建て替えができません。

つまり、
・所有者には住宅用地
・他人には住宅が建てられない土地
という状態です。

それにもかかわらず、固定資産税評価額は約800万円でした。

しかし実際の市場価格は、1㎡あたり約2,000円程度。

固定資産税評価額と市場価格には非常に大きな差が生じていました。

なぜ固定資産税評価額と実勢価格は違うのか

では、なぜこのようなズレが生まれるのでしょうか。

代表的な理由を3つ紹介します。

建物評価は一定以下にならない仕組み

固定資産税評価では、建物がどれだけ老朽化しても評価額には下限があります。

建物評価は、一定の割合以下には下がらないルールになっているため、築50年、築100年でも評価額が残るケースがあります。

そのため、市場では価値がない建物でも、固定資産税評価額だけを見ると高額に見えてしまうのです。

行政の課税評価だから

固定資産税は市町村にとって重要な税収です。

評価額は市場価格をそのまま反映するものではなく、固定資産評価基準に基づいて決定されます。

また、地価が急激に上下しても税額が急変しないよう調整措置が設けられているため、市場価格とのズレが生じることがあります。

特に地方では、実際には売れない土地でも評価額だけが高く残っているケースが少なくありません。

不動産の個別事情を評価していない

市場価格は、土地ごとの条件によって大きく変わります。

例えば、
・境界が確定している
・測量済み
・接道条件が良い
・インフラが整っている
こうした条件は買い手にとって非常に重要です。

反対に、
・未測量
・境界不明
・接道条件が悪い
・再建築不可
といった土地は大きく価格が下がります。

しかし固定資産税評価額では、こうした個別事情が十分に反映されないため、市場価格との乖離が生まれます。

買主の視点では築年数が価格に大きく影響する

築年数は、売主が考える以上に買主の判断へ大きな影響を与えます。

例えば、築19年11か月の住宅と築20年1か月の住宅では、見た目や建物の状態にほとんど違いがない場合もあります。しかし、税制上の取り扱いが変わることで、買主が受けられる優遇措置に大きな差が生じるケースがあります。

住宅ローン減税や不動産取得税の軽減措置などは、一定の築年数を超えると利用できなくなることがあり、その結果、買主の実質的な負担額は数百万円単位で変わる可能性があります。

そのため、売主から見ると「たった数か月の違い」と感じる築年数でも、買主にとっては購入価格を決める重要な判断材料になります。

このような事情から、築年数が古くなるほど建物そのものの評価だけでなく、「購入後に利用できる制度」まで考慮して価格が決まるため、固定資産税評価額との乖離がさらに大きくなることがあります。

不動産価格は建物や土地だけで決まるものではありません。税制上の優遇措置や再建築の可否、維持管理に必要な費用など、購入後にかかるコストまで含めて市場価格が形成されます。そのため、固定資産税評価額だけを見て資産価値を判断してしまうと、実際の売却価格との間に大きなギャップが生まれることがあるのです。

本当の価値を知るには何を調べるのか

不動産会社や専門家は、価格を判断する際に固定資産税評価額だけを見ているわけではありません。

主に次のような調査を行います。

登記情報の確認

まず確認するのは、
・登記簿
・公図
・測量図
です。

土地面積や境界の状況、測量の有無などを確認します。

行政で法的制限を調査

続いて役所で、
・都市計画法
・建築基準法
・道路法
・上下水道
・ガス
・接道状況
などを確認します。

建物が建てられるかどうか、再建築可能かどうかは価格に大きく影響します。

現地調査

最後に現地を確認します。

例えば、
・建物の老朽化
・擁壁の状態
・庭木
・隣地との境界
・周辺環境
など、資料だけでは分からない要素を確認します。

これらを総合的に判断して初めて、おおよその実勢価格が見えてきます。

相続前の売却を検討したほうがよいケースもある

固定資産税評価額より大幅に安くしか売れない不動産の場合、相続後ではなく相続前に売却した方が有利になることがあります。

相続後は、
・相続登記
・名義変更
・専門家への報酬
など、新たな費用が発生します。

一方、所有者が元気なうちに売却できれば、これらの費用を抑えられる可能性があります。

もちろん事情は家庭ごとに異なるため、売却を検討する際は早めに専門家へ相談することが重要です。

まとめ

固定資産税評価額は、税金を計算するための基準であり、市場で売れる価格を示すものではありません。特に地方や過疎地域では、解体費用や法的な制限、建て替えの可否、境界の状況などが大きく影響し、評価額を大きく下回る価格でしか売れないケースもあります。不動産の本当の価値を知るには、登記情報や法的規制、現地状況まで含めた総合的な調査が欠かせません。相続や売却を考えている方は、「固定資産税評価額=資産価値」と考えず、早めに専門家へ相談し、適切な判断を行うことが大切です。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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