子どもに嫌われる実家とは?住宅ローン・相続前に知っておきたい現実

子どもに「実家はいらない」と言われる時代

親世代の多くは、「この家を子どもに残してあげたい」「せっかく建てた家だから受け継いでほしい」と考えています。しかし、任意売却の相談現場では、子ども世代から「実家はいらない」という声を耳にする機会が少なくありません。

親の思いと子どもの本音には、大きなギャップがあります。

今回は、任意売却の現場で実際に多くの相談者から聞いてきた内容をもとに、「子どもが実家を必要としない理由」をランキング形式でご紹介します。また、その背景や今後の住宅の考え方についても解説します。

子どもが実家をいらないと言う理由ベスト3

第3位:家が古い

最もよく聞く理由のひとつが「家が古い」ということです。

子どもが小学生くらいに住んでいた家は、子どもが成人する頃には築20年前後になります。そして結婚や子育てを考える30〜40代になる頃には、築30年以上になっているケースも珍しくありません。

もちろん、古い家そのものが悪いわけではありません。しかし住宅設備は年々進化しています。

例えば、
・最新のシステムキッチン
・節水型トイレ
・バリアフリー設計
・高断熱・高気密住宅
など、暮らしやすさは昔の住宅とは大きく違います。

一方で、実家が和式トイレのままだったり、設備が老朽化していたりすると、「ここで生活したい」と感じる人は少なくなります。

特に結婚相手から見ると、「古い家で同居する」という選択は大きなハードルになることもあります。

第2位:立地が不便

次に多い理由が「不便だから」です。

現在40代前後の親世代が住宅を購入した時代は、高度経済成長からバブル期にかけてでした。

当時は、
・郊外にマイホームを持つこと
・土地は資産になること
・今買わなければ将来買えなくなること
という考え方が一般的でした。

そのため、多くのニュータウンが山を切り開いて造成されました。

ニュータウンが抱える課題

当時のニュータウンには、
・坂道が多い
・階段が多い
・最寄り駅まで遠い
・バス利用が前提
といった特徴があります。

若い頃は気にならなかった立地でも、高齢になるにつれて生活の負担は大きくなります。

さらに人口減少や高齢化が進むことで、
・スーパーの閉店
・バス路線の縮小
など、利便性がさらに低下する地域も増えています。

現在の子ども世代は、駅近や利便性を重視する傾向が強く、「わざわざ不便な場所へ戻りたい」と考える人は多くありません。

第1位:親と同居したくない

最も多く聞く理由が、「親と同居したくない」というものです。

少し寂しい現実ではありますが、これは任意売却の現場でも非常によく聞く話です。

親世代は、
「この家を残せば子どもが帰ってくる」
と思っていても、子ども世代は、
「親とは別々に暮らしたい」
と考えているケースが少なくありません。

もちろん親子関係が悪いという意味ではありません。

現在は、
・共働き世帯の増加
・ライフスタイルの多様化
・プライバシー重視
などの理由から、親子でも別居を選ぶ家庭が増えています。

そのため、「子どものために家を残す」という親の思いが、そのまま子どもの希望につながるとは限らないのです。

「家は資産」という考え方は変わりつつある

昔は「家や土地は資産」と考えるのが当たり前でした。

しかし現在は、その考え方だけでは通用しない時代になっています。

例えば、
・固定資産税
・修繕費
・草刈りや管理費
・空き家対策
など、所有しているだけでお金がかかります。

つまり、持っているだけではお金を生み出さず、むしろ支出が続くケースも少なくありません。

本当に資産と呼べる不動産とは

本当の意味で資産と言えるのは、お金を生み出す不動産です。

例えば、
・賃貸として貸し出して家賃収入がある
・固定資産税や修繕費を差し引いて利益が出る
このような状態であれば、その不動産は資産と言えるでしょう。

一方、自宅は住むための家であり、収益を生み出すものではありません。

さらに売却しようと思っても、
・高低差がある
・階段が多い
・駐車場がない
・駅から遠い
といった条件では、思うように売れないケースもあります。

時代の変化で住宅に求められる価値も変わった

親世代が住宅を購入した昭和40年代から平成初期にかけては、「家は一生に一度の買い物」「土地は値上がりするもの」という考え方が一般的でした。実際、土地価格は右肩上がりで推移し、「今買わなければ将来もっと高くなる」という空気が社会全体にありました。

そのため、多くの人が郊外にマイホームを購入し、子どもへ資産として残すことを前提に住宅を取得してきました。当時としては、それが最も合理的な選択だったと言えるでしょう。

しかし、現在は人口減少や少子高齢化が進み、住宅に対する価値観も大きく変わっています。土地を持っているだけで価値が上がる時代ではなくなり、「どこにある家なのか」「生活しやすい立地なのか」が重視されるようになりました。

特に若い世代は、駅までの距離や買い物の利便性、病院や学校へのアクセスなど、日々の生活のしやすさを重視する傾向があります。そのため、昔は人気だったニュータウンでも、現在では購入希望者が減り、売却に時間がかかるケースが珍しくありません。

さらに、高齢になるほど坂道や階段の多い住宅は生活の負担になります。若い頃は気にならなかった立地でも、年齢を重ねるにつれて「毎日の階段がつらい」「車がないと生活できない」という悩みを抱える方も増えています。

こうした時代の変化を考えると、「子どもに家を残すこと」が本当に子どものためになるのか、一度冷静に考えてみることが大切です。住宅は思い出の詰まった大切な場所ですが、それと同時に、これからの暮らしや将来の資産価値という視点でも見直してみる必要があるでしょう。

売りにくい家は今後さらに増える可能性がある

特にニュータウンや高低差のある住宅地は、今後さらに売却が難しくなる可能性があります。

実際に任意売却の現場でも、
・階段を30段以上上る住宅
・車庫がない住宅
・車庫を造るだけで数百万円〜1,000万円近くかかる土地
などは、なかなか買い手が見つからないケースがあります。

「いつか売れるだろう」と考えていても、市場環境は年々変化しています。

人口減少や高齢化が進む中では、不動産の価値も地域によって大きく差が出るようになっています。

家を守ることだけが正解ではない

住宅ローンを無理して払い続けたり、不便な家を維持するために生活が苦しくなったりするのであれば、一度立ち止まって考えることも大切です。

例えば、
・駅に近い場所へ住み替える
・病院やスーパーが近い地域へ移る
・売却できるうちに売却を検討する
といった選択肢もあります。

「家を残すこと」が目的になってしまうと、本来大切にしたい生活の質や家計を犠牲にしてしまうことがあります。

家は家族の幸せのためにあるものであり、家のために生活が苦しくなるのは本末転倒と言えるでしょう。

まとめ

親世代の「子どもに家を残したい」という思いは、とても自然で愛情のある考え方です。しかし、子ども世代の価値観は大きく変化しており、「古い」「不便」「同居したくない」といった理由から実家を必要としないケースが増えています。

また、人口減少や高齢化が進む現在では、「家=資産」とは限りません。維持費や固定資産税がかかるだけでなく、立地によっては売却が難しくなる可能性もあります。だからこそ、「将来誰が住むのか」「本当に維持する価値があるのか」を早めに考えることが重要です。住宅ローンや実家の扱いに悩んでいる方は、感情だけで判断するのではなく、現在の資産価値や将来性も踏まえて、後悔のない選択を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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