【第15話】フラット35不正融資事件を任意売却の専門家が解説

フラット35を利用して投資用不動産を購入する事件が発生しました。
なぜ、多数の不正融資が行われたのか?
その背景、首謀者、手口、住宅金融支援機構の対応、借主の対応策などについて宅建士である杉山善昭が解説

 

こんにちは。任意売却の専門家、杉山善昭です。

今回はご質問に対しての回答ではなく、番外編ということでお届けしたいと思います。

もうすでにご承知の方もいらっしゃると思いますが、”フラット35の不正融資問題”というテーマでお話をしていきたいと思います。

フラット35というのは、言うまでもなくマイホームを買う方のための住宅ローンで、長期間金利が一定で、しかも安いという特徴のある融資制度で、政府系金融機関という位置づけです。

今回のフラット35の不正融資問題は、このフラット35を使い、自分が住みますという虚偽の申請をして購入した不動産を、自分で住むことなく人に貸してしまう、つまり投資用の不動産として使ってしまうというところに問題があります。住むと言って買ったのに、実際は貸してる。これは虚偽の申請をしてお金を不正融資を受けたのでは?というところを今あちこちのマスコミで報道されてるということです。

報道によると、東京都内の不動産業者等を中心として、投資用の不動産を購入した約100人ほどが不正融資を受けているのではないかと言われています。この報道と事案を見ると、不動産会社が主導でレクチャーをし、絵を描いてやっていたのではないかなと思います。

どうしてフラット35を使って不動産投資をするのかということについても少し触れたいと思います。通常、不動産投資をする時には不動産投資用の融資というものを利用します。この不動産投資用の融資は、どのような物件を買うかによって変わりますが、金利が2%から4%ぐらいの間で借りていることが多いです。フラット35の金利がいくらかと言うと、大体1%くらいです。どこから経由して借りるかによって若干変わりますが、1.2から1.3の利息で借りられます。そもそも不動産投資は何のためにするか、家賃を受け取って儲けるためにやっているわけです。ということはつまり、高い金利で借りるよりも安い金利で借りれたほうが結局は自分の利益が増えるわけです。つまり、投資家の利益を増やすために低金利の、本来受けてはいけない融資を書類を偽装して受けた、ということなんです。

この事件の根本的なところは、投資家が己の利益を増やすために使ってはいけない融資を使ってしまった、というところです。

不動産業界では有名な話ですが、フラット35は審査に穴があると言わざるを得ない融資制度です。実際住んでいるかどうかの裏付けをとりません。なるべくしてなっているなと私は思います。

今回は都内の不動産業者が発端と書いてありますが、日本中あちらこちらでやっている会社があっても何ら不思議ではないということです。調査がこれから始まると書いてありますが、どのような調査をするかと、フラット35の方から融資の確認についてのお手紙のようなものが、おそらく借りている人全員に送られるのではないかと思います。もちろん送り先は物件の住所です。当然そこに住んでいなければ宛名不在で帰ってきます。帰ってくると、本人が住んでいないということなので、実際連絡を取りいまどこに住んでるか、どうして住んでいないのか、いつから貸しているのかという調査がおそらく始まると思います。

当然、政府系金融機関ですのでうやむやでこのまま終わらせないと思います。国の予算も入っていますし、不正融資をそのまま放置するというのはまず考えられません。ということになると、先ほど申し上げた通り調査が始まり、実態として住んでいないというようなことがあれば、一括返済の要求を借りてる側、債務者にされることが予想されます。

借り入れの契約書の中には、虚偽の事実が発覚した場合は一括返済を要求出来る、というような文言が入っています。当然この通り要求すると思います。

仮に人に貸していたとしても、例えば転勤などで、元々住んではいたが転勤で一時的に貸している、というような方はこの問題とは少し違います。この問題は最初から意図的に自分が住むと嘘をついて人に貸す用の物件を買ってしまったという場合です。転勤などはやむを得ないのでこれは除かれます。

フラット35から一括で返してと言われた借りている側、つまり債務者側は基本的に応じる必要があります。と言っても数千万のお金を右か左に用意できる方は少ないと思います。従って不動産を売却することで、その返済に充てるということが当然のことながら予想されます。ただ私が危惧しているのは、売って返せる方は大丈夫ですが、かなりの方が売っても返せないのではないかと思っています。その理由は、フラット35というのは物件価格まで融資が受けられるのですが、ほとんどの不動産、特に新築住宅は買った瞬間に値段が落ちます。車でも新車で納車された瞬間、中古車になって値段が下がるというのはありますよね。それと同じでガタンと下がります。下がった金額でしか売れないとなると、残っているお金の分だけ埋め合わせしなければなりません。つまりどこかから持って来なければ売ることすらできないということが原則です。これでかなり困る方が多いのではないかなと思います。中には別の金融機関からフリーローンで使い道が自由なものを借りてきて、埋め合わせして売却する方もいらっしゃるでしょうし、親御さんから借りてきて売る方もいらっしゃるかもしれません。

返せとと言われたけど返せない、売ることもお金がなくて出来ないってことになると、今度はフラット35は返せない人に対して競売の申し立てをするでしょう。そうすると競売で強制的に売却がなされると言うことになるわけです。一定数の方が任意売却といって、競売だと募集価格が相場の半値近いところからスタートすることもあるので、任意売却で少しでも高く売ることによって被害を少しでも減らそうという方が一定数発生することが予想されます。私どもではフラット35で購入した不動産の任意売却、負債を全額払わなくても売却ができて、より多くの負債を返済できるような売却をしています。この事件に伴ってご相談がこれからまた増えることが予想されます。

それから、どうも不動産業者首謀の案件だと思いますが、フラット35で買った家を賃貸に回していて、その賃貸は不動産会社サブリースで家賃保証していたところ、この家賃保証をしていた不動産さんが行方不明になってしまい、さらに自分も払えなくなってしまったという方からご依頼を受けて私が実際に調査をしたことがあります。通常家賃は、返済口座に入ってきた方が、お金を動かす手間がない分だけ楽になります。何故かというとA銀行に家賃入れて B 銀行から引き落とされるのであれば、B銀行に最初から入れてもらえば住む話です。しかし、調査をしたところこのスキーム、フラット35を使って融資を受け、そして不動産投資に回したという方は、家賃が入ってきてしまうとその銀行にバレてしまうから、わざと返済口座ではない口座に家賃を振り込ませてください、ということをやってやっているという話を聞きました。実際に資料を見てそうなっていたので、完全に最初から投資目的で、買わせるスキームなのでしょう。

私の調査によると、不動産投資セミナーのようなものを開き、そこに不動産投資に興味のある人、もしくは不労所得に興味のある人を、将来の不安を煽り、こういうスキームであれば低金利で借りれますよというような御前建てをし、こういう言われたらこう言ってくださいのようなレクチャーをしつつ買わせているようです。被害者といえば被害者であり加害者といえば加害者なんです。

フラット35側にすれば、その不動産会社と投資家、投資家というかにわか投資家さんがグルになって、不正融資を受けたしか見られていないです。これをなくすためには、徹底した管理、確認を、フラット側が確認するということを表明すると無くなると思います。用は制度の穴を突いて、ここまでは確認が来ないということが周知されてしまっているので、それを悪用する不動産会社が出てきたということなんです。フラット35の欠陥を突かれた事件ということです。

不動産投資家さんに対しては、どこかでおかしいなと思っていたはずなので、こうやって言われたらこうやって言ってくださいとか、住むためでないとお金は借りれませんから住みますと言って下さいねとか、レクチャーを受けてたはずです。というか受けていないとぼろが出てしまい借り入れが出来ないので、投資家さんも自らの責任でお金を借りたと言うことになります。払えない場合は、真摯に問題を受け止めていただいて、1円でも多くのお金を返せるように、被害が少なくなるようにする必要があると思います。 決してやってはいけないのは、この状態に及んで隠し事をしたりすると、嘘が嘘を呼んでしまうので絶対にやめたほうがよろしいと思います。

もしフラット35の調査が入って、一括返済を求められたというようなことがありましたら、私どもで問題解決のサポートをしていますので、どうぞご相談してみてください。

今回はここまでです。また次回お会いしましょう。