住宅ローンが払えない…競売になる前に必ず知っておきたい3つの現実的な選択肢

住宅ローンの支払いが苦しくなったとき、多くの方が「このまま競売になってしまうのでは」「家を失うしかないのでは」と強い不安を感じます。しかし、実は競売に至る前にはいくつかの選択肢が存在します。本記事では、住宅ローンを滞納した場合の流れと競売のリスクを整理した上で、競売になる前に知っておきたい3つの現実的な対処法について、専門家の視点から分かりやすく解説します。

住宅ローンが払えなくなったときに起こる現実

住宅ローン延滞後の基本的な流れ

住宅ローンの返済が遅れると、まず金融機関から督促が始まります。
最初は比較的柔らかい内容の電話や通知ですが、延滞期間が長くなるにつれて内容は次第に厳しくなっていきます。
・「いつまでに支払ってください」
・「このままでは一括返済になります」
・「期限の利益を喪失します」
といった表現が使われるようになります。

一括返済請求は“形式的な手続き”

一定期間返済が滞ると、金融機関から「残債を一括で返済してください」という通知が届きます。
実際には、分割返済すらできない状況で、何千万円もの一括返済ができる人はほとんどいません。

金融機関もそれは承知の上ですが、競売という次の法的手続きへ進むために必要なプロセスとして、一括請求を行っています。

最終的に進む「競売」という選択肢

一括請求にも応じられない状態が続くと、住宅は裁判所を通じて競売にかけられます。
競売では、売却代金がローン返済に充てられますが、多くの場合、売却額は市場価格よりも大幅に低くなります

競売がもたらす4つの大きなリスク

① 市場価格より大幅に安く売却される

競売物件は、一般的な不動産市場価格の約5〜6割程度で募集されることが多いと言われています。
例えば、通常なら3,000万円で売れる家が、競売では1,600〜1,800万円程度になることも珍しくありません。

その結果、
売却しても住宅ローンが完済できず、借金だけが残る
というケースが非常に多くなります。

② 競売情報は誰でも閲覧できる

競売にかかると、裁判所のウェブサイトなどで物件情報が公開されます。
・住所
・外観・室内写真
・間取り
・現況
これらが誰でも閲覧可能な状態になり、精神的な負担は非常に大きなものになります。

③ 競売にかかる費用も債務者負担

競売の申立費用や手続き費用は、金融機関が一時的に立て替えますが、
最終的には債務者(ローンを借りている人)の負担となります。

つまり、
「競売になる=借金が減る」
とは限らず、むしろ負担が増えるケースも少なくありません。

④ 強制執行による明け渡しという現実

競売物件が落札され、代金が納付されると、新しい所有者は裁判所に対して「明け渡し命令」を申し立てることができます。

これはお願いではなく、法的な命令です。

期限までに退去しない場合、最終的には強制執行が行われます。
裁判所職員、弁護士、作業員、鍵業者が立ち会い、鍵を開け、荷物を運び出すという、非常に過酷な状況になります。

競売になる前に取れる3つの選択肢

選択肢① リスケジュール(返済条件の変更)

リスケジュールとは何か

リスケジュール(リスケ)とは、住宅ローンの返済条件を見直すことです。
・返済期間を延ばす(30年→35年など)
・一定期間、元金据え置きで利息のみ支払う
といった方法があります。

リスケジュールが向いている人
・将来的に収入回復が見込める
・赤字が月1〜2万円程度
・一時的な収入減(怪我・一時的な休職など)
このようなケースでは、リスケジュールが有効な場合があります。

金利のみ返済には注意が必要

「1年間は利息だけでいいですよ」という提案を受けることがありますが、
これは根本的な解決にならないケースがほとんどです。

据え置き期間が終わると、
・残り期間が短くなる
・毎月の返済額が増える
という問題が発生します。

選択肢② 任意売却

任意売却とは

任意売却とは、競売になる前に、金融機関の承諾を得て住宅を売却する方法です。

競売と違い、
・周囲に知られにくい
・市場に近い価格で売却できる
・引っ越し時期や条件を相談できる
といったメリットがあります。

任意売却ができる条件
・保証会社に債権が移っている段階
・売却してもローンが完済できない場合
金融機関の承諾が必須
・返済が一定期間以上滞っている
早すぎても、遅すぎてもできないため、タイミングが非常に重要です。

任意売却が向いている人

・中長期的に返済の見込みが立たない
・生活を立て直すことを最優先したい
・競売だけは避けたい

選択肢③ 自己破産

自己破産は「最後の手段」

住宅ローンが払えないと、「すぐ自己破産しなければ」と考える方もいますが、
実際には多くの方が、
・リスケジュール後に断念
・任意売却後に残債整理
という流れで自己破産を選択しています。

自己破産が向いているケース

・多重債務で精神的に限界
・複数の金融機関から同時に督促
・生活再建が最優先

自分に合った選択肢を見つけるための判断基準

家計の現状を数値で把握する

まず必要なのは、家計の見える化です。
・毎月いくら赤字なのか
・どこにお金が使われているのか
多くの方が家計簿をつけておらず、「なんとなく苦しい」状態になっています。

将来の収入見込みを考える

・一時的な収入減なのか
・中長期的に回復が難しいのか
これによって選択肢は大きく変わります。

家族の意向と生活設計

・子どもの進学
・就職
・将来の生活費
感情だけではなく、現実的な数値と家族の意思をすり合わせることが重要です。

不動産の現実的な売却価格を知る

住宅ローンが残っている不動産は、
保証なしで売却する前提になるケースが多く、相場より安くなる可能性があります。

早めに相談することが結果を大きく左右する理由

住宅ローンの返済が苦しくなったとき、多くの方が「もう少し頑張ってから考えよう」「今は忙しいから後回しにしよう」と判断を先送りにしてしまいます。しかし、住宅ローン問題は時間が経てば経つほど選択肢が減っていくという特徴があります。

例えば、延滞初期であればリスケジュールが検討できたケースでも、延滞が長期化すると金融機関との交渉余地は小さくなります。また、任意売却についても、競売の申立てが進んでしまうと、売却条件の調整が難しくなり、結果として不利な条件を受け入れざるを得なくなることもあります。

さらに、精神的な負担が大きくなれば、冷静な判断ができなくなり、「本当は別の選択肢があったのに、勢いで自己破産を選んでしまった」という後悔につながるケースも少なくありません。住宅ローンの問題は、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で専門家に相談することが、生活を立て直すための近道になります。

なお、相談する際は「まだ決断していない」「何を選ぶべきか分からない」という段階でも問題ありません。状況を整理し、選択肢を知るだけでも、精神的な負担は大きく軽減され、次に取るべき行動が見えやすくなります。

まとめ

住宅ローンが払えなくなったからといって、すぐに競売や自己破産に進む必要はありません。リスケジュール、任意売却、自己破産にはそれぞれ適した状況があり、大切なのは感情ではなく現実を数値で把握し、生活を守る選択をすることです。家を守ることよりも、あなた自身とご家族の生活を守ることが最優先です。早い段階で専門家に相談することで、選択肢は大きく広がります。

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この記事を書いた専門家

茂木智子