固定資産税の滞納がある不動産売却

一般的に固定資産税と呼ばれるのは、固定資産税の他に、都市計画税という税金も含まれます。
都市計画税は、都市計画区域内の土地に課税される税で、原則市街化区域のみが課税対象の区域になります。
こんにちは、任意売却の専門家杉山善昭です。
今回は固定資産税の滞納がある不動産売却について話を進めて行きたいと思います。
固定資産税は1月1日現在の所有者に課税される税金で、年間4回に分けて納付することができます。
税金の分割納税が認められている、数少ない税金です。
納付する期限は市町村の条例で決める事ができます。
例えば、
東京は6、9、1、3月
大阪は4、7、12、3月
横浜は4、7、1、3月
各行政で若干バラツキがあります。
さて、ここで問題です。固定資産税を滞納している不動産を売却することはできるでしょうか?
このページの目次
固定資産税延滞で差押登記がされている不動産の売却
結論から言うと、固定資産税を滞納している不動産を売却することは可能です。
差押登記がなされていてもです。
ただし、注意が必要です。
延滞している税金の差し押さえ登記がなされている場合、購入した買主は、売主の税金未払いにより、公売手続きでその所有権を失う可能性があります。
そのため実務では、買主への名義変更登記の時点で未納税金全額を納税したことを確認し、差押え登記を抹消することが売買条件にされます。
買主への引き渡しの時点で、未納税金の差押え登記がなされていない場合、心配は不要です。
といっても未納税金が存在する場合、役所は債務者の財産を差し押さえなければいけないという決まりがあります。
国税徴収法(差押の要件)
第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
二 納税者が国税通則法第三十七条第一項各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、当該請求に係る期限)までに完納しないとき。
出典:国税徴収法
※固定資産税は地方税ですが、扱いは国税と同列です。
念のため、地方税法の条文も確認しておきましょう。
地方税法(市町村民税に係る滞納処分)
出典・地方税法
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
二 滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
2 第二次納税義務者又は保証人について前項の規定を適用する場合には、同項第一号中「督促状」とあるのは、「納付又は納入の催告書」とする。
ご覧のように同じ内容になっています。
従って、今現在不動産などに差押がなされていないとしても、いつ差押がなされてもおかしくないというリスクを抱えていることになります。
その為、固定資産税の未納がある不動産を売却しようとする場合、仮に現時点で差押がなされていないとしても、完納ができる見込みを立てて販売計画をすることが必要です。
売却した時以降の固定資産税は払わなくてもいいの?
固定資産税の納税義務者は、1月1日現在の所有者と決まっています。
たとえ年の途中で売却したからといって、納税義務者は変わりません。
従って税法上、全額を納税義務者(売却前の所有者)に支払い義務があります。
新所有者に納税義務はありません。
不動産売買の実務は少し違います。
使っている人が使っている分(機関)負担するべきだろうという考え方です。
実務的には、引き渡し日を境として日割りで清算をすることがほとんどです。
起算日が1月1日なら、1月1日~引渡し日(又は引渡し日の前日)迄が売主、以降12月31日までの分が買主という形で年額を365日で割り、該当日数を掛けて求めます。
起算日が4月1日なら4月1日~引渡し日(又は引渡し日の前日)迄が売主、以降3月31日までの分が買主と言う形です。
東日本は1月1日起算、関西は4月1日起算が多いです。
買主にとっては、売主がどれだけ税金を滞納してたとしても、不動産に差押え登記がされていなければ、買主には全く影響しません。
しかし、前述した通り、督促が発せられてから10日経過すると「差押えなければいけない」という規定がある以上、滞納している状態においては、いつ何時差押登記がなされるかもしれないので注意が必要です。
未納税金はあっても分割納付していれば大丈夫?
滞納している方の多くは分割払いをしていると思います。
分割払いができているので、差押えの問題は大丈夫と思っている方が多いですが、残念ながらそれは違います。
税金の分納していても差押えする理由という記事でご確認いただけます。
固定資産税を滞納している不動産の売却手順

ではいよいよ具体的にどのような手順で不動産の売却をすれば良いのか解説しましょう。
基本的な考え方は普通の不動産売却と同じです。
しかし、未納税金があることを勘案しなければいけない部分があります。
完納できるか検証
不動産を売却して、完納できるかどうか?は非常に重要なポイントです。
完納できるか?という点については解説が必要ですね。
●不動産の売却代金だけで完納
●不動産の売却代金+自己資金で完納
という二つのパターンがあります。
最初の売却代金だけで完納の方はそれほど問題がないと思います。
問題は売却代金だけでは足りない場合(売却代金+自己資金)です。
もちろん、税金の滞納があるくらいですから、まとまった自己資金があることは稀だと思います。
しかし、売却までの数カ月間、「お金を貯める」という方法も実務的には数多くあります。
ちなみに、一部だけ税金を払って足りない分は後払いというのは、未納税金の場合、ほぼ不可能です。
特に住宅ローンの残債がある場合は、話が複雑になります。
売却した代金の中から優先的に返済をする順番が法律的に定められているからです。
どう配分されるのか?については
住宅ローンの借入時期と税金の納期限の関係によるのですが、実務経験上、売却代金から税金を払って残りを住宅ローンに充てるというのは、ほとんどの場合で不可能です。
売却代金がどのように分配されていくか?についてはこちらの記事で解説しています。
不動産売却時に、未納税金は全て解消する必要があると覚えていただければ結構です。
実際の販売活動
未納税金も住宅ローンも全額支払いができる見込みがあるのなら、即販売活動が可能です。
任意売却の場合は、公売と違い一般の不動産と同じ販売手法(sumo、アットホーム、ホームズなど)で行います。
但し、「売却後の建物保証をしない」「測量をしない」といった任意売却ならではの売却条件を付ける必要がありますので、注意が必要です。
当事務所は、一般の不動産会社さんと違い任意売却ならではの売買ノウハウをたくさん持っていますのでご安心ください。
手続きの費用、方法についてはこちらのページで解説しています。
売却途中に差押え登記がなされたらどうなる?
不動産に差押登記がなされていたとしても、売却すること自体は可能です。
但し、完納する必要がありますので、前述した通りどうやって売却完了時までに完納するかを販売前の時点で具体的に考える必要があります。
売却までの間、遅れている税金の督促に対してどうすれば良いのか?
不動産を売却すると言っても、1日2日で売却できるわけではありませんよね。
時には数カ月単位かかる場合もありますし、売れたから即引越しというのも難しいと思います。
ということは、必然的に不動産が売れるまでの間、役所に対しての対応、納税はどうすれば良いのか?という目先の事も対策をする必要があります。
本ページで、ここまでその事を書かなかった理由は、「目先の対応が重要」ではないからです。
ついつい意識は「目先の問題」>「大きな問題」となりがちですが、目先の対応だけを考えているとそれは、問題の先送りにしかなりません。
問題解決への全体像、方向を決めるからこと、では目先の問題をどうクリアしましょうか?となります。
「大きな問題」>「目先の問題」ということです。
売却して生活を立て直すという大きな問題を解決する方向にあなたが行くのなら、「目先の問題」については私があなたの状況に合わせて立案します。
以上、未納固定資産税がある不動産の売却について書いてきました。
理屈上、滞納があっても売却自体は可能ですが、買主の立場で言えば、やはりネガティブ要素です。
住宅ローン緊急相談室では、過去にも未納税金の差押えが登記が着いた不動産を数多く、問題解決し、売却してきました。
目先の督促の対応方法等についてもアドバイスをしながら、売却をサポートしています。
まずはご相談ください。
この記事を書いた専門家

- 任意売却の専門家
-
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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