税金の分納していても差押えする理由

あゆみ

こんにちはアシスタントのあゆみです。
今回は、税金の分割払いと差押のお話を杉山善昭先生にしていただきます。
先生!よろしくお願いいたします。

杉山先生

はい、こんにちは。
未納税金の分割納付と差押について意外と誤解が多いので順番に解説していきますね。
税金が払えないシリーズの動画は沢山用意しているので
住宅ローン緊急相談室youtubeチャンネル動画リスト「税金が払えない方へ」も併せてご覧ください。

所得税、健康保険、住民税は前年度の年収に比例して課税されているので、所得を得ていた時と、今では経済状態が変化していて、払いたくても払えない。
そんなご相談が多く寄せられます。
更に固定資産税だけは、前年度年収にかかわらず課税となります。
つまり無収入でも課税されるというものです。

また、新築で購入すると、数年間の減税期間がありますが、減税終了となると一気に増加し結果、家計を圧迫して困った!というご相談も多く寄せられます。

このように容赦なく課税される税金。
未納が増加してくると、役所の催促もだんだんと強くなり、「いつまでに払えますか?」とサラッと言われます。

最後までお読みいただくと未納税金、分割納付、差押について知ることができ、だからどうすれば良いのか?が分かります。

税金の滞納が始まってから差押までの流れ

実を言えば、役所の人間もすぐに払えないことは、ほぼ分かっています。
しかし、それでも聞くのです。

理由は、税金は一括払いが基本で「遅れた分を分割で払うことができる制度」そのものが原則ないからです。

相続税は延納制度が制度があり分割して納付することができますが、ほとんどの税金は一括納付です。
また、固定資産税は4回に分けて払うことができますし、健康保険も分けて払っているかもしれませんが、こちらは分納とは呼びません。

差し押さえられるもの、差し押さえられないもの

私は役所の味方などするつもりは、毛頭ありませんが、役所の立場から言うと「一括で徴収することが困難なので、やむを得ず分割で納付させてあげている」のです。

では、分納の約束をすれば、もう大丈夫でしょうか?実は違うので、注意が必要です。

今、税金を分割で払っている方は、分割納付の約束をしているからといって、差押をしないとは限らない。ということを。まず知っていただきたいと思います。

給料が全額差し押さえられて生活ができなくなるのは嘘

財産が差押えられて特にダメージが大きいのがお給料。
正に生活の基盤となる収入源ですから、こちらが差し押さえられたら悲劇的な状態になります。

あゆみ

えっと、、、給料って一部しか差押えられないって聞いたので、大丈夫ですよね?

杉山先生

あゆみさんその通りです。
国税徴収法76条、国税徴収法施行令34条により給料を全額差押えることはできません。
納税者にも生活というものがあるからです。
しかし、、、給料が銀行口座に振り込まれた後、それは滞納者の預金という扱いになるのです。


また給料の差押は、一定金額ですが、給料が銀行に振り込まれた瞬間、それは預金になりますから理屈上全額差押の対象になります。
1998年年2月10日、最高裁が「差押禁止債権が預金口座に振り込まれた場合、一般財産である預金債権に転化し、その禁止債権としての属性は承継されない」との判決が出されました。

この判決により、給料は全額抑えることができないが、給料が振り込まれた口座なら全額差押え可能という判断を行政がし実際に差押をしたのです。

2016年2月15日、依頼者が勤務する会社から、依頼者の預金口座に給与支給額19万4879円が振り込まれました。その後、携帯電話料金の引き落としや預金の払い戻しなどにより預金口座は10万0308円となりました。振込から2日後の平成28年2月17日、税務署は、この全額(10万0308円)を差押えたのです(以下「本件差押」といいます。)。

税金は分納できる

税金は一括払いが基本です。
遅れた分を分割で払うことは実務上ありますが、分割払いは自分の権利ではありません。
一括で納付ができないからやむなく分割払いをしているに過ぎません。

差し押さえられないためにできること

  • 督促状が来たらすぐに納付すること
  • 納付できないなら分納の申し出をすること
  • 約束した分納が守れそうにない場合、事前に連絡すること

普通の滞納者は、全部逆のことをします。
逃げたい気持ち、払えないからどうしようもないと思う気持ち、払えるようになったらすぐに払おうと思っているうちにズルズル、、、

逆です、逃げたくなる時だからこそ、向かっていくのです。

差し押さえを解除する方法はない

あゆみ

先生!しょーもない質問かもしれませんが、差押を解除する裏技的なものはないのでしょうか?

杉山先生

裏技をここで言ったら裏技いならないじゃないですか(笑)
といっても裏技はありません。
完納するしかありません。

不動産などの財産が差押えられるためのプロセスを理解すると、差し押さえを解除するための方法も見えてくるかと思います。

法律では督促から10日を経過した場合、差押えなければならない。という決まりになっていますが、実務上、厳格に運用されていません。
実際にどんな流れになっているかというと、

  1. 税金が未払いとなる
  2. 督促が届く
  3. 督促が届く
  4. 督促が届く
  5. 差押予告通知が届く
  6. 差押される

督促が複数回届くという表現をするために2.3.4で同じことを繰り返しましたが、3回来ることが約束されているわけではありません。

役所は法律通りいきなり差し押さえをするのではなく、自主的に納付をしてもらうべく通知を送っています。
それでも納付がなく、かつ納税者からの連絡もなく、完納される見込みが低いと判断した場合、財産を差し押さえるのです。

あゆみ

そうか堪忍袋の緒が切れちゃったから差し押さえをするんですね。
そんな状態で「これから真面目に払うから解除して」と言っても説得力がないですよね。

杉山先生

まさにその通りです。
差し押さえがけしからん!とかいきなり差し押さえられた!という話は本質からずれているのです。

ちなみに、自己破産しても未納税金は免除になりません。

税金を分納していても差し押えられる場合

私は分割で納付しているから差し押さえられることはない。と思っている方も多いようですが、これは違いますので注意しましょう。

あゆみ

分割で払うと約束しても差押えられることがあるってことですか?

杉山先生

はい、その通りです。

この写真は、ある市役所の収納課が納税者に送付している手紙です。
文面に書いてあるように、「分納中でも財産が見つかれば、差し押さえますよ」というものです。
財産とは言うまでもありませんが、不動産に限らず、車や貴金属、預金、生命保険の解約金、お給料、退職金も含まれます。

他に財産がある場合

分納は財産がないからやむなく分割での納付を認めているのですから、財産があれば差押えるのは当然と言えば当然です。

子供名義の預金だから大丈夫と思いこんでいる方もいらっしゃるかもしれませんが間違いです。

あゆみ

自分の通帳じゃなければ大丈夫なのかと思ってました。。。

杉山先生

誰の名義か?が重要なのでなく、実質誰のものか?を見ているのです。

~他の財産に入るもの~

  • 子供名義にしている実質自分の通帳
  • 未登記の相続財産
  • 生命保険の解約返戻金
  • タンス預金
  • 自動車
  • ジュエリー、骨とう品など
  • 売掛金

滞納を放置した場合

未納の状態が続き、納付の意思がないと差押されやすくなることは言うまでもありません。

役所は他の回収手段を考えます。

滞納を放置していると、役所に呼び出されます。
一括納付が原則ですが、ハードルが高めな分割支払いを要求されます。
生活ギリギリなラインになることが多いです。

放置は何の解決にもなりませんし、より最悪な状態に向かっていくことを知りましょう。

対策としては、

  • 呼び出される前に自主的に相談に行く
  • 滞納者であることを自覚する
  • 納税できない言い訳をしない

という点が大切です。

役所も限られた人員で運営をしています。
差し押さえる手続きにしても、より高額な、より長期な、より納税意識が低い人から順番に差押えるのは自然なことです。

別の表現をすれば、差し押さえ緊急度ランキングをより低下させれば、差し押さえられる危険性も低下するということです。

完納の未来が見えない場合

あゆみ

しっかり分納して、他に財産がなければ、差押えられることはないってことですか?

杉山先生

もう一つ、完納できるか?という要素があります。
例えば10万円の未納税金を毎月500円払うというような状態。
200回で本税完納ですが、残念ながらこれは払っている内に入りません。
このようなケースでは給料の差押等がされやすいです。

役所の決算は3月です。
従って、来期に未納税を持ち越すことを極端に嫌います。
私が知る限り、どの役所でも回収率、未納発生率といった数値を意識しています。

来庁者から見える所に「収納率●●%必達」といった横断幕が張り出されているケースもありました。

差し押さえられたら任意売却ができないのか

条件付きで「できます」

どんな条件かというと差し押さえを解除するというただ一点です。

任売中に差し押さえられるケースはあります。
役所と分割納付をする約束をしていたのに守ることができなかった。などです。

任意売却中に差し押さえられるのは事態を複雑にさせるので極力避けたいです。
そのために弊社では任意売却のことだけでなく、お客様のお金の周り全般も見てアドバイスしています。

任意売却は差し押さえられる前に

あゆみ

先生、不動産会社なら、滞納している税金と差し押さえも含めたアドバイスをしてくれるものなのでしょうか?

杉山先生

任意売却に精通していない不動産会社さん多いので、注意が必要です。
「最後の最後で税金の問題が解決できないことが分かって頓挫してしまった」というご相談をよく受けます。
これは不動産会社のスキルが低く、差し押さえの交渉は何とかなるだろうと甘く見ていた結果だと思います。

不動産会社は税理士ではないので、税務そのものの交渉をすることはできません。
できることは不動産の売却に関して差し押さえ登記を解除(抹消)する事務手続きのやりとりです。

差し押さえされた不動産の任意売却は関係者も多く、利害関係も相反する事が多いため、それぞれに理解を求めながら調整して進めていく必要があります。
必然的に時間も要します。

住宅ローン緊急相談室へ相談に来られる方のほとんどは住宅ローンだけではなく、税金の滞納も始まっています。
弊社では単純に税金だけ、住宅ローンだけなんとかしようという付け焼刃の解決だけでなく相談者の生活を正常化へのサポートをしています。
まずは無料相談からスタートしてみてください。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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