夫が退去して、妻子供が住み続ける場合の注意点


こんにちは任意売却の専門家、杉山 善昭です。
今回は「夫が退去して、妻子供が住み続ける場合の注意点」というタイトルです。

「あの時は、そんなこと考えなかった」
このようなご相談をよく受けます。
この記事はラジオ的に音声で聞くことができます。

・結婚しているときに購入した住まい。
名義は夫、住宅ローンも夫の名義。

・夫の浮気が原因で離婚したので、先々の住宅ローンは夫が負担。
慰謝料代わりに購入した家にタダで居住できることになっている。
夫は引越し、住宅には妻と子供が引続き住むことにした。

・あれから5年が過ぎた。先日突然銀行から返済の督促が来た!?
どうやら、夫の支払いが遅れているらしい。

・あわてて電話もしたが、元夫も生活がギリギリで住宅ローンの返済を続けて行くことが無理だという。

・このままでは、競売にかけられてしまう。
競売になってしまったら、引越しもしなければいけない。
もちろん、何の保証も・・・ない。

どうしよう。。。

事例により多少違いますが、おおむね以下のようなプロセスを踏んでご相談に至ります。

このような状況の中で一番してはいけないことがあります。
それは何でしょう?

住宅ローンの支払い額を夫(元)の口座に入金すること。

こういう目先の対処をしてしまう方がいらっしゃいますが、最もマズイ方法です。
絶対にやってはいけません。

1ヶ月や2ヶ月ならしのげるでしょうが、住宅ローンが終わるまでこのような対処ができるか?

残念ながら、その場しのぎにしかなりません。
元妻が、頑張って支払っても、不動産の名義は夫のままですしね。

それなら、不動産の名義を妻に変えれば良いのではないか?
そう思うかもしれませんが、銀行の住宅ローン契約上、「返済中は不動産の名義変更禁止」となっているので名義を変えることはできません。

さて、話を元に戻しますが、そもそも離婚するときには、財産分与の請求ができます。

しかし、離婚後2年を経過してしまうと、財産分与の請求が出来ません。(相手が認めれば話は別ですが・・・)

つまり、財産を分けるなら2年以内に行動をおこす必要があるのです。

さて、ここからが不動産のプロである私の話となります。
「財産分与と言っても、家が売れる金額よりも借金のほうが多いよ。」
こんなケースが多いことは私も充分承知しています。

確かに財産分与するほどの資産とはなりえませんよね。

しかし、それでも

『夫の浮気が原因で離婚したので、先々のローンは夫が負担。
慰謝料代わりにタダで居住できることになっている。
夫が引越し、住宅には妻と子供が引続き住むことにした。』

こんなケースでは、不動産の名義を妻に変えることをオススメします。
但し、単純に名義だけ変更すれば、良いわけではありませんので注意してくださいね。
不動産の名義を妻に変更するためには、売買若しくは財産分与等の理由が必要です。

財産分与の場合、単純に不動産の名義変更をして、ローンの名義を夫のままにすると、数千万円の財産分与ということになります。

離婚の慰謝料が数千万円というのは、売れている芸能人や利益の出ている法人の代表者でなければあり得ません。
残念ならがら、税務上アウトです。
贈与税のMAXは55%です。安易に名義変更するととんでもないことになります。

不動産の名義を妻に変える為には、債務引受若しくは売買という方法があります。
債務引き受けとは、夫の住宅ローンを妻が引き受けるという事です。

宣言するだけで債務引受ができる訳ではなく、借りている銀行の承諾が必要になります。
「免責的債務引受」と「重畳的債務引受」という二つの債務引受があります。

免責的債務引受は、夫から妻に住宅ローンの名義が変わった後、夫は一切関係なくなるというものです。
収入などが夫以上でないと債務引き受けはまずできません。

重畳的債務引受の方は、夫から妻に住宅ローンの名義は変わりますが、引き続き夫は連帯債務者という立場に立たされます。
不動産の名義を失っているのに借金の責任だけ残るのですから、銀行は良くても夫に何のメリットもありません。

債務引受を銀行に申し入れると多くの場合、重畳的債務引受を求めてきます。

債務引受はハードルが非常に高いので、実質的に売買しかないという事になります。
住宅ローンが残っているので不動産の名義を妻名義にする際、住宅ローンも妻名義にできれば良いのですが、夫名義の借入はを妻に変えることは事実上無理です。

その為、夫と妻が売買し、妻が新規にローンを組んで売買代金を夫に支払い手続きを完了させます。

この時に問題になるのが、売買代金とローンの借り入れです。

売買代金は周辺相場を勘案して適切に定めることが求められます。
適切な金額の算出は私どもで査定を行うので問題はありませんが、「現在の住宅ローンの残高」=「売買代金」ではないという所がポイントです。

売買代金は周辺相場から計算した金額であって、ローン残高とは何の関係もありません。

「ローン残高」>「売買代金」なら不足分を夫が一括で支払う必要があります。
逆に
「ローン残高」<「売買代金」なら余剰分は夫のものになります。

少し例を挙げましょう。
残債が3500万、不動産の相場が5,000万の場合、売買代金は当然5,000万円になります。
売買代金を3,500万にした場合、夫→妻に1,500万円もの贈与がなされたとみなされます。

売買代金を5,000万円にした場合、夫の手元に1,500万円残ることになります。
購入する妻は5,000万円の住宅ローンなどで資金調達をすることになります。

夫に1,500万円の資金が残るならそのお金は財産分与の対象となります。
財産分与が半分が妥当という事になれば、妻には半分の750万円ということになります。

この場合、売買代金の5,000万円-財産分与の750万を相殺して支払うことは可能です。
但し、税務申告は5,000万円の売買と750万円の財産分与という事になりますので、税務署から750万の財産分与が多すぎるという指摘がある可能性は否定できません。

もう一つ事例を出しましょう。
残債が5,000万円、相場が3,500万の場合です。
この場合、売買は3,500万ですので、夫は1,500万円資金調達しないと売ること自体ができません。
もし、財産分与の割合が半分である場合、妻はプラスの財産の半分を受け取ることができますが、同時にマイナスの財産の半分を負担する義務が生じます。
つまり、不足する1,500万の半分である750万円の負担を求められる可能性があるということです。


私の事務所に寄せられるご相談は「ローン残高」>「売買代金」になっていることが多いのですがこの場合は、前述した通り夫(妻が財産分与を要求する場合は妻も)が不足分を出さなければ売買できません。

このようば背景の中、どうすることもできずに、結局、不動産とローンの名義は夫のままで妻、子供が住み続けるという選択をしてしまう人がいますが、専門家としては絶対に避けていただきたい点です。

離婚した後に、妻、子供が住むことは、生活環境を替えないという意味では非常にメリットがあります。
お子さんのことなどを第一に考えれば確かに、お気持ちも良く理解できます。
しかし、離婚して夫婦の関係を解消したのに、不動産の関係は清算しないという辻褄が合わない事は将来にわたって不安定な要素を残す事になります。

まして、不動産の名義は夫で、ローンは妻が払うというのは、百害あって一利なしです。

話は少し戻りますが、なぜ、名義を変更するほうがよいのか?についても触れておきましょう。
不動産権利書
不動産の名義変更をしておけば、その不動産の処分権は妻が持つことになるからです。

先のケースでは住宅ローン返済が不能になった場合、元夫の協力が得られないと売却することは不可能です。

しかし、不動産の名義を移しておけば妻の判断で不動産を売却が可能です。

繰り返しになりますが、売買しなくても、単純に不動産の名義だけ変更すれば、良いわけではありませんので注意してくださいね。
前述した通り、銀行ローンでは「返済中の不動産の名義変更は禁止」という条文があります。

違反すると期限の利益を喪失し、一括返済の要求を受ける可能性があります。
一括返済できなければ競売にかけられることになってしまいます。

安易に不動産の名義を変更するのは辞めましょう。

離婚する際は不動産の関係も清算する事を強くお勧めいたします。

「ローン残高」>「売買代金」という状態でも、ローンの返済が遅れている場合、支払いが困難になるという場合は、任意売却という手法を使って売却することができる可能性があります。

この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演、
プロフィールをもっと見る
●この専門家に無料電話相談をする:TEL0120-961529※タップで電話かかります。