定年後に住宅ローンが残る時代へ|80歳完済時代の現実と「売却・住み替え・リースバック」まで徹底解説

こんにちは。住宅ローン緊急相談室の杉山です。
近年、住宅ローンの完済年齢は80歳まで延びる一方で、企業の定年は60歳が多数派という現実があります。定年後も住宅ローンが残る――それはもはや珍しいことではありません。本記事では、定年と住宅ローン、不動産の関係について、具体的な計算方法と現実的な選択肢を分かりやすく解説します。

住宅ローン完済年齢は80歳時代へ

かつて住宅ローンの完済年齢は70歳が一般的でした。その後75歳へと延び、現在では80歳完済になっています。

住宅価格の上昇、返済期間の長期化、低金利政策などの影響により、金融機関は返済期間を伸ばすことで借入可能額を増やしてきました。その結果、「借りやすい環境」は整いましたが、「老後まで続く返済」という新たな課題が生まれています。

80歳まで住宅ローンを払う――。言葉で聞くと現実味が薄いかもしれませんが、実際には珍しい話ではありません。

定年は何歳?現実とのギャップ

一方、企業の定年はどうでしょうか。

統計上、現在も60歳定年の企業が約7割を占めています。さらに約9割の企業が「役職定年制度」を採用していると言われています。

55歳の壁「役職定年」

役職定年は55歳前後で実施されることが多く、管理職手当がなくなり、年収が大きく下がるケースがあります。
55歳:役職定年で年収ダウン
60歳:定年退職
65歳以降:再雇用・年金生活
住宅ローン完済:80歳
この流れを見ると、55歳・60歳という「収入減少の壁」と、80歳まで続く住宅ローンとのギャップがいかに大きいかが分かります。

最初にやるべきことは「感覚」ではなく「計算」

「節約すれば何とかなる」「贅沢をやめれば大丈夫」
このようにおっしゃる方は多いですが、実際に家計簿をつけていないケースがほとんどです。

重要なのは、感覚ではなく具体的な数字です。

簡単な家計簿のつけ方

難しい家計簿は必要ありません。

月の収入を書く(年金・給与・その他収入)
月の支出を書く(住宅ローン・生活費・保険・固定費など)
差額を計算する
これだけで、現実が見えてきます。

ケース別:定年後に住宅ローンが残る場合の判断基準

① 毎月黒字の場合

定年後の収入で生活費+住宅ローンが賄える場合、緊急性は低いです。ただし、注意すべき点があります。

収入はいつまで続くのか
病気・介護リスク
物価上昇リスク
黒字でも「将来の変化」に備えた余裕資金は必須です。

② 毎月赤字だが、預貯金でカバーできる場合

例えば、
預金:1,000万円
毎月赤字:5万円
1,000万円 ÷ 5万円 = 200ヶ月(約16年8ヶ月)

この期間内に住宅ローンが完済できるなら、大きな問題にはなりません。

ただし、老後資金を切り崩す生活になります。本当にそれで良いのかは慎重に考える必要があります。

③ 預金が枯渇する可能性がある場合

ここからが本当に重要です。

毎月赤字
完済前に預金が尽きる
子どもの援助もない
この3つが揃う場合、将来的な破綻は「ほぼ確実」です。

問題は「いつ破綻するか」が見えているかどうかです。

見えてから動くのでは遅いのです。

なんとかなる」は一番危険な考え方

相談現場で非常に多いのが、「まだ大丈夫だと思っていた」というケースです。実はこの“なんとなく大丈夫”という感覚が、一番危険です。

住宅ローンは毎月決まった額が出ていきます。収入が減っても支出は基本的に変わりません。だからこそ、55歳や60歳のタイミングで一度立ち止まり、将来の収支を可視化することが大切です。

例えば、役職定年で月収が5万円下がったとします。年間で60万円。10年で600万円です。この差は決して小さくありません。しかも社会保険料や税金の負担も変化しますから、手取りベースで見ると想像以上に厳しくなるケースもあります。

「まだ働けるから大丈夫」「退職金があるから何とかなる」という声もよく聞きます。しかし、退職金は“生活を安定させるための資金”であって、“赤字を埋め続けるための資金”ではありません。使い方を誤ると、後戻りできなくなります。

子どもに頼る前に考えるべきこと

お子さんから援助を受けられる可能性がある場合、それは一つの安心材料です。しかし、ここにも注意点があります。

子ども世代にも住宅ローンや教育費、将来の老後資金準備があります。最初は「一緒に住むから払うよ」と言ってくれても、転勤や結婚、介護など環境は変わります。二世帯住宅が長続きしないケースも珍しくありません。

ですから、「援助がある前提」で資金計画を立てるのではなく、「援助がなくなっても大丈夫か」という視点で考えることが重要です。

売却は“失敗”ではない

売却という言葉にネガティブな印象を持つ方もいらっしゃいます。「せっかく買った家を手放すなんて…」と感じるのは自然なことです。

しかし、住まいは人生を支える“道具”です。人生のステージが変われば、道具も変わるのが自然です。
若い頃は広さや庭、駐車場が必要だったかもしれません。しかし老後は、階段の少ない住まい、買い物が便利な立地、医療機関へのアクセスの良さが重要になります。

家を守るために生活が苦しくなるのでは本末転倒です。生活を守るために家の形を変える。そう考えていただければ、売却や住み替えは決して後ろ向きな選択ではありません。

早めの相談が選択肢を広げる

差押えや競売の通知が届いてからでは、取れる選択肢が限られてしまいます。しかし、まだ返済が続いている段階であれば、売却、住み替え、リースバックなど複数の方法を冷静に比較できます。

特に重要なのは、「破綻する前」に動くことです。計算をすれば、いつ資金が尽きるかはある程度予測できます。その時期が見えたなら、早めに対策を講じることで、老後資金を守ることができます。
定年と住宅ローンの問題は、誰にでも起こり得る現実です。大切なのは、目を背けず、数字と向き合い、必要であれば専門家に相談すること。未来を守る行動は、今日から始められます。

破綻前に売却するという選択

無一文になってから手放すのか。
余裕があるうちに手放すのか。
この差は、老後の安心感を大きく左右します。

住み替えという前向きな選択

定年後、多くの家庭では子どもが独立し、部屋が余っています。
その「使っていない空間」にローンを払い続ける必要はあるでしょうか。

コンパクトな住まいへ住み替え
駅近・病院近くへ移動
車に依存しない生活へ
年齢とともに生活環境を変えることは、自然で合理的な判断です。

救急搬送時の距離が生存率に影響するという話もあります。高齢期には立地が大きな意味を持ちます。

退職金の使い方を間違えない

退職金を住宅ローン返済に充てることは一つの方法です。

しかし、全額を投入してしまうのは危険です。

医療費
介護費用
予期せぬ支出
老後は「想定外」が起きやすい時期です。手元資金をゼロにする判断は避けましょう。

どうしても引っ越したくない場合の方法

「ローンが払えない。でも引っ越したくない」
特に長年住み慣れた地域では、近所付き合いや友人関係があります。

そのような場合の選択肢の一つがリースバックです。

リースバックとは?

リースバックとは、家を売却した後も、その家に賃貸として住み続ける仕組みです。

売却で住宅ローン完済
その後は家賃として支払い

例:
リースバック家賃:月10万円
住宅ローン:月15万円
この場合、毎月5万円負担が軽減します。

ただし、契約条件や将来の更新条件など、慎重な確認が必要です。

緊急対応が必要なケース

滞納が始まっている
督促状が届いている
差押え予告が来ている
この段階では時間との勝負です。

競売になると市場価格より低く売却される可能性が高く、手元資金がほとんど残らないこともあります。

早めの相談が、結果を大きく左右します。

まとめ

住宅ローン完済80歳時代において、定年後も返済が続くことは珍しくありません。重要なのは「感覚」ではなく「計算」です。定年後の収入で生活が成り立つかを具体的な数字で確認し、赤字の場合は預金の枯渇時期まで算出することが第一歩です。

そのうえで、退職金の活用、住み替え、売却、リースバックなどの選択肢を検討します。破綻してからでは遅く、余裕がある段階での判断が老後の安心を守ります。今の住まいに執着するのではなく、人生後半に最適な住環境へと発想を切り替えることが、これからの時代の賢い選択です。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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