住宅支援機構からの引越代取り扱い基準
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の任意売却における引越代の取り扱い基準はその時々で変わります。
全く認めない期間が合ったり、比較的ゆるい基準で認めるようになったりと、時代の変化と共に基準が変わります。
そしてその判断基準が公表されることは基本的にありません。
任意売却の実務を元にした経験を踏まえて2019年最新版の情報をお届けします。
その前に任意売却と引越代の関係について基本的なことからお話しをしておきたいと思います。
不動産を売却して全ての負債が返済できる方は、売却すれば住宅ローン自体は返済できるのでそれほど問題になりません。
住宅を売却しても、住宅ローンの全額を払うことができない。という状態の場合、本来は売却代金全額を返済することになります。
例えば、残債が4,500万円あり売却可能額が3,500万円であれば、3,500万円を返済し残る負債が1,000万円という具合です。
しかしそうなると売却に関する諸経費を自前で用意する必要があります。
売却に関する費用とは、抵当権抹消登記費用や仲介手数料などです。
本来売却諸経費は売主が負担するべき費用ですが、任意売却をすることになっている不動産所有者にとってこの費用を捻出することは非常に困難です。
そこで、債権者は本来自社に返してもらうべきお金を減らして、売却経費の支払いを認めるようになるのです。
先の例で言えば、売却代金3,500万円から売却経費約120万円を引いて3,380万円を返済するといった具合です。
本来受け取れる自分の取り分を削ることを認めるのですから、限りなく全部を経費として認めることはしません。
お金を貸している立場になって考えれば当然です。
さてそれではいよいよ本題です。
現在、住宅金融支援機構の任意売却において転居費用を認めているか否か?
住宅金融支援機構の公式サイトに掲載されている「任意売却パンフレット」には
「任意売却パンフレットに定める手続きにご協力いただける場合、お客様の状況により売却代金から転居費用の一部を控除してお渡しできる場合があります」
引用:住宅金融支援機構任意売却パンフレット
と書いてあります。
ではどんな場合に引越代が認めらるのか?
一言で言うと、ケースバイケースです。
少し前は、破産手続きをしている人は、ほぼ全員転居費用の一部が認められていました。
逆に言うと、破産申請していない人の転居費用はかなり大変でした。
ところが今は、少し様子が違います。
任意売却の実務をしている感覚で言うと、「売れる金額」「建物の使用状態」によって転居費用の可否が変わっていると感じます。
売れる金額については言うまでもありませんが高く売れることです。
「高い」と言うと、何を基準に高いか安いか?という点が浮かんでくると思います。
任意売却をする際、住宅金融支援機構も独自評価を持っています。
その金額よりも高く売れると転居費用は認められやすいということです。
もう一点、建物の状態です。
端的に書くと、「大切に使っていればいる程、転居費用が出しやすい」と感じます。
例えば、室内で大型犬を飼っており、フリーリングや壁がボロボロ。
同じ築年数の物件に比べて大幅に程度が悪い場合。
例えば、室内でタバコを大量に吸っており、壁がヤニだらけでタバコ臭が酷い家。
例えば、不用品で室内があふれていて床が見えないような家。
実は、融資した不動産について所有者はその価値を保全しなければいけない。という義務があります。
例で挙げたような不動産について、その保全義務を満たしていないと言えるのです。
価値を保全しないばかりかこれらの行為は、建物の価値を大幅に低下させる要因となります。
簡単に言えば、家を壊すのと同じ行為をする人に対して、転居費用を出す必要はない。と考えていると私は考えます。
実際に建物の状態が酷い物件の任意売却を今年何件も扱いましたが、どれも転居費用が認められることはありませんでした。
逆に、非常に手入れよくお使いになっている物件の場合は、スムーズに転居費用が認められました。
但し、引越代だからと言って何でも認められるわけではありません。
身分相応、必要最低限、自助努力、経済的困窮といった要素があります。
この記事を書いた専門家
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(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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