親族(親子、兄弟)間で不動産売買する際、絶対押さえておくべき基本知識

不動産の売却というと、直ぐに「普通に売る」というイメージが浮かぶと思いますが、不動産は第三者に売却するほか、親族に売却するという売却法があることは意外と知られていません。
親子間や、兄弟間での不動産売買というと「何で?」と思われることがあるかもしれませんが、基本的には信頼関係があるので、取引をしやすい部分があります。
と言っても、親族間の売買だからこそ注意しなければいけない点も多々あります。
今回は親族間の不動産売買の特徴、注意点について解説していきます。

親族間売買はどんな時、どんな状態で使われるのか?

どうして親族間売買をしなければいけないか?どんな時に役に立つ手続きなのか?
まずは解説していきましょう。

  1. まとまった資金が必要
  2. 引越ができない場合
  3. 特定の人に財産を受け継がせたい
  4. 法定相続人以外に財産を受け継がせたい
  5. 相続税を安くしたい

概ね4つ程ありますが、事実上1.2が要因で親族間売買を行う事が多いと感じます。
3の場合は、遺言や相続時精算課税を使った手法で実現することができますし、4は遺贈、贈与という手法で実現することができるからです。

つまり、「何等かの理由で多額の資金が必要になる」という要素と「引越をしたくない」という要素が合わさる場合に親族間売買が使われるのです。

居住用を前提に書きましたので、引越という言葉を使いましたが、住んでいない場合は「売却後もその不動産との関係性を保ちたい」という事になります。

5については、親族間売買のデメリットの所で解説します。

一般の売却と違う点

親族間売買と一般の売買で違う所ですが、手続き自体は変わりません。
売買する不動産の特定、売買代金、支払方法、取引条件等を決める必要はありますが、当事者が肉親というだけで第三者と売買をするのと何ら変わりません。

一般の売買と変わる所はこのページで詳しく解説をしますが、一言で言えば「外的要因」です。

資金調達の難易度や、各種税控除の特典を受けることができるか否か。周辺部分に大きな違いがあります。

売買価格は税務署がシビアにチェックする

一般の不動産売買は売主買主間で売買代金を決めます。
親族間売買においても、価格の決定は同様です。
但し、親族間売買の場合、特殊な背景があることが多いため、一般の相場と乖離した売買価格としてしまうことが多々あります。

一般の相場と乖離した売買をすると、税務署は「贈与があったものとみなす」ことがあります。
例えば、一般相場が5,000万円の不動産を3,000万円で売買した場合、売主から買主に2,000万円の贈与があったものとみなすといった感じです。

逆に、一般相場が5,000万円の不動産を7,000万円で売買した場合、買主から売主に2,000万円の贈与という具合です。

売主と買主が全く関係性のない第三者間であれば、税務署のチェックはほぼ入らないのですが、親族などの特別の関係がある場合、最も注意したいところです。

税特典が使えない

不動産の売却をした場合、その翌年に確定申告をすることになります。
譲渡に関して利益が出ている場合、譲渡税という税金が課税されるのですが、一定の要件を満たすと、3,000万円控除などの適用を受けることができます。

しかし、親族間売買の場合この税特典を受けることができません。

売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

出典:国税庁HP

またその他にも、「10年超の軽減税率の特例」や「買換え特例」も利用できませんし、購入者側も「住宅ローン控除」の適用を受けることができません。

住宅ローンが通りにくい

親族間売買の場合、住宅ローンの利用不可としている金融機関がほとんどです。
理由としては、「価格が不透明」「資金用途に疑義がある」「あとから税務署で贈与税認定されるリスクがある」などです。
また、不動産会社が関与しない親族間売買の場合、重要事項説明書がありません。
金融機関は融資の審査をする際、不動産会社が作成する重要事項説明書を非常に重視します。
何故かと言うと、重要事項説明書には、不動産についての法的制限が漏れなく記載されており、担保力の審査に無くてはならないものだからです。

重要事項説明書がない不動産売買で融資を受ける場合、金融機関の担当者が不動産の調査を行う事になりますが、不動産の専門知識としては決して高いレベルではないので、調査が不十分になってしまう可能性が考えられます。

親族間売買のメリット

親族間売買のメリットとしては、一つだけと言っても良いでしょう。

「売却後も関係性が続くこと」です。

例えば、親の不動産を子供が購入する。親は引き続き居住を続ける。といったケースです。
もう一つ例を挙げましょう。住宅ローンが払えなくなった子供が所有する不動産を親が購入する。といったケース。

どちらも居住を継続することで、不動産との関係性は無くなりません。
お気づきになったかもしれませんが、売買という名の資金調達だという事が分かります。

分割払い

一般の不動産売買は、引き渡しを受ける際に代金を全額売主に支払いをします。
しかし、親族間の売買の場合、売り手側が売却代金を一括で受け取らなくても良い場合であれば、代金を分割で受け取る取り決めをしやすくなります。
極論を言えば、毎月7万円を35年払い。とすることも可能です。

また、一般の分割払いは「金利」という概念がありますが、親族間の売買をする際に分割払いの金利は必須ではありません。

但し、言うまでもなく、実際に約束通りに履行していない場合や本来取るべき金利を免除している場合、税務署から贈与判定される可能性が高まりますので注意が必要です。

遺産分割対策になる

相続対策というとすぐに相続税に意識が行きがちになりますが、相続税と同じかそれ以上に大切なものが、「遺産分割対策」です。

相続人が二人以上いる場合、誰がどこの不動産を相続するか?
もめ事が起こりやすいと言えます。

相続発生前に売買をしておくことで、遺産分割のもめ事が起こる可能性を低くすることができます。

親族間売買のデメリット

あまりメリットの多くない親族間売買ですが、メリットもあればデメリットもあります。

贈与税

売買代金が相場と乖離している場合、贈与の判定を受ける可能性があります。
具体的事例を挙げたほうが分かりやすいかもしれませんね。

住宅ローンの残高が4,000万円、相場が3,000万円の物件を親族間売買するとしましょう。
相場で売買するとなると、売主は1,000万円用意する必要が生じます。
売主に手持ち金がない、しかし住宅ローンは精算しなければならない。
では、売買代金を4,000万円にすればよいのではないか?

これ安直な発想です。

3,000万円のものを1,000万円も高く買う行為は、買主から売主に1,000万円の贈与があったとみなされる可能性が非常に高いです。

逆もしかりです。
相続税評価額が1億円ある不動産を、1,000万円で子供に売却。
こうすると、莫大な相続税を魔法のように回避できるように思えるかもしれません。
しかし、この脱法行為、もちろんNGです。

国税庁のページにも開設があるくらい、誰もが思い付きやすく陥りやすいことだという事が分かります。

譲渡税

一定要件に合致する居住用の財産の場合、売却時に3,000万円まで利益が出ても譲渡税は課税しない。というとてもお得な制度があります。

不動産の譲渡税はMax譲渡所得税30.63%、住民税9%ですから、3,000万円控除はとてもお得で魅力的です。
しかし、親族間売買の場合この制度は使う事ができません。

「税特典が使えない」の箇所で解説した通り「売り手と買い手が親子や夫婦等特別な関係でないこと」と明記されていますから。

資金調達

親族間売買の際に住宅ローンを利用することは、極めて困難だと考えたほうが良いです。

余程経済的余力のある人でないと、住宅ローンの審査が通りません。
また、一般の住宅ローンは、不動産価格の100%まで可という商品がありますが、親族間売買の場合掛け目が60-70%になることも多いです

この事を逆手にとって、一部の金融機関で親族間売買の住宅ローン商品を出していますが、総じて金利、諸経費が高めに設定されています。

利用にあたっては、その借入をして本当に生活が継続できるか?検討することが望ましいです。

親族間売買の手続きの流れ

売買の条件を決める

売買の条件とは、価格、代金の支払い時期、その他取り決めの内容等を言います。
売買後に、税務調査が入り売買代金の否認をされないために、不動産鑑定士による不動産鑑定評価額を元に売買代金を決めることが最も有効です。

売買契約をする

売買契約自体は、紙に必要事項を書けば法律的にはOKです。
しかし、住宅ローンの申し込みをする場合や、後の税務調査リスクを避けるためには、専門家に契約書面を作成してもらうことをお勧めします。

代金決済をする

代金の支払いは現金でももちろん有効ですが、後の記録となるように、口座を介した振込で行う事が望ましいです。
後日、税務署からどの口座からお金を引き出したか?調査が入る事も珍しくありませんので、出どころ、支払先は証拠が残るようにしておくのが良いです。

名義変更登記をする

法務局に行き、必要書類を提出すると所有権移転登記の申請をすることができます。
しかし、不動産の売買は高額になることが多く、万が一登記の申請ができないという事になると大ごとです。

司法書士という登記の専門家に頼むことが実務上多いですし、筆者としてもお勧めいたします。

親族間売買に必要な費用

次に費用の面の説明をしましょう。売主側、買主側で必要となる費用が違うことは言うまでもありませんが、一般の売買とほぼ同じなので、別に解説しているページをご覧ください。

売却する側にかかる費用

任意売却の費用、支払い方法について」ページで詳しく解説していますので、ご覧ください。

購入する側にかかる費用

「不動産を購入する時に必要な費用」ページで詳しく解説していますので、ご覧ください。

こんな状態では売買不能!具体的事例を紹介

次に親族間売買ができない、著しく困難な人、状態について解説します。
これを知ると、自分は親族間売買ができるのか?できないのか?ある程度予想が付くようになります。

不動産に住宅ローンや税金の差押さえがある

売買しようとする不動産に差押さえがあり、買主が親族ということになると、不良債権を正常な債権にする行為と銀行は判断します。
実質的に、名義貸しのような状態になり、融資の審査は非常に厳しいものになります。

購入者に合理的理由がない

購入者がマイホームとして購入すると申請しているにも関わらず、通勤不可能な場所にある不動産。
例えば、不動産が横浜市にあり、買主が茨城在住、茨城通勤という場合
横浜に住む合理的な理由がないので、住宅ローンの審査は厳しくなります。

購入者の経済的信用がない

言うまでもありませんが、購入者が既に住宅ローンを抱えていたり、車やクレジットの返済が高い、勤続年数が短いなどというネガティブな材料があると、融資審査が厳しくなります。

相場に比べ現在の残高が高い

住宅ローンは基本的に物件評価(相場)までしか組むことができません。
例えば現在のローン残高が3000万円、相場が2000万円の場合、買い主の住宅ローン上限も2000万円となり兄弟間売買するために売主は1000万円の持ち出しをする必要があります。
(但し、任意売却状態の場合、1000万円の持ち出しは不要です)

親族間売買を成功させるための要件

最後に親族間売買を成功させるための要件を書いておきましょう。

  • 売買価格が適正であること
  • 売買する理由が正当であること
  • 買い手に資金調達能力があること

この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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