権利書が無い家を任意売却する方法

権利書がない家の任意売却

●高利貸しが権利書を持っていて返してくれない
●離婚した妻が権利書をどこかに隠しもっている
●亡くなった父名義の不動産があるが権利書が見つからない

背景は色々ありますが、とにかく権利書がない!という方のための記事になります。

権利書が無ければ一切何もできない。。。
そんな勘違いをしていませんか?

正しい知識をお教えしますね。

権利書がなくても家を売ることは可能

驚きましたか?
権利書は長い間保管しておく物なので、途中で無くしてしまったり、火災で燃えたり、津波で流されたりする可能性があります。
そもそも相続の場合は、被相続人が権利書をどこにしまったのか分からないということもあります。

権利書が無いと不動産売買ができないのでは困りますよね。
このようなときの為に救済策(手続き)があります。

簡単に言うと、権利書の代わりになるものを作成して、不動産の名義変更登記をすることができるのです。

そのため、
「高利の金融から借りた時に預けてしまったので、権利書は手元にない」という方でも
「別れた妻が権利書を持って行ってしまった」という方でも
「家がゴミ屋敷で、権利書を見つけることが不可能」という方でも任意売却をすることができます。

権利書と書いていないこともある

権利書がない!と慌てる前に、基本的な事を少しお話ししておきましょう。

現在は「登記識別情報」と言います。
昔は「登記済証」と言いました。

※以下二つ合わせて「権利書」と言います。

その為、権利書権利書・・・と探してみても、見つけることができないかもしれません。
書類の名前が違ってるので気が付かない。という方。意外と多いのです。

ちなみに、登記識別情報は用紙の下部にシールが貼ってあり、剥がすとアルファベットや数字などが12桁の表記がされています。
この英数字12桁が権利書そのものの情報であり、番号が第三者に知られると権利書を盗まれたことと同じになってしまうので注意が必要です。

シールは剥がしてはいけないと言っても良い位大切なものです。
第三者が登記識別情報を保持していて返還の実現が著しく困難な場合且つ、所持している者が信用できない。という場合は、登記識別情報についての失効の申出という手続きにおいて、保全することが可能です。
※参考サイト:法務省、新不動産登記法Q&A

登記済証の方は、縦書きで書かれており、登記官の印章が押印されています。
こちらは12桁の英数字表記はなく、登記済書そのものが大切な書類となります。

登記識別情報や登記済証という書類を探してみてください。

権利書は再発行することができるのか?

どこをどう探しても、登記識別情報若しくは登記済証が見つからない場合。
権利書を所持している人が返還を拒み続けている場合。

そんな時は、「そうだ!再発行すれば良いのでは?」と思うかもしれません。

しかし、残念ですが、権利書の再発行をすることはできません。

権利書がない場合の不動産売却手続き

前述した通り、権利書は再発行することはできませんので、権利書に代わる書類を作成して売買をすることになります。
大きく分けて、「事前通知制度」「本人確認情報」「公証人の認証」の三つの方法があります。

事前通知制度

登記名義人に対して、「あなた所有の不動産について、所有権の移転申請が出されましたが間違いないでしょうか?」という通知を登記官が発送します。
所有者が個人の場合は、本人限定郵便という郵便で、法人の場合は書留郵便等の方法で送達されます。

届いた書類に署名押印し法務局に提出すると、所有権移転登記の申請が進められるというものです。

方法論としてはありますが、実務上は滅多に使われることがありません。
理由としては、通知発送の日から2週間以内に手続きをしないと失効してしまう点や、代金の授受をどのタイミングで行うか?について売主、買主双方にリスクが発生することなどが挙げられます。

本人確認情報

この売主は不動産所有者に間違いありません。という書類を弁護士又は司法書士が作成します。
不動産登記法第23条第4項第1号に規定があります。

【本人確認のために必要な書類】 1.運転免許証、個人番号カード、旅券等、在留カード、特別永住者証明書、運転経歴証明書のうちいずれか一以上の提示を求める方法 2.国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療、介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証、国民年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳又は戦傷病者手帳いずれか二以上の提示を求める方法 3.1.2の書類のうち、いずれか一以上及び官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか一以上の提示を求める方法 ※出典:不動産登記規則から抜粋

という具合に、公の書類で本人であることが間違いない事について厳格に確認をされます。

公証人による認証

公証人役場


こちらは不動産登記法第23条第4項第2号に規定されていますが、弁護士や司法書士が作成する本人確認情報の手続きとほぼ同じです。

但し、不動産登記の実務の現場では司法書士が登記申請の代理人となることがほとんどです。
この場合、司法書士が登記申請責任を負う事になります。

その為、例え公証人による認証があった場合であっても、司法書士が本人確認情報の作成を改めて行う場合があります。

相続不動産で権利書がない場合

既に亡くなってしまった人が所有している不動産の場合、権利書が見つからない。というケースは実務でも非常に多いです。
相続の場合、権利を渡す側の人は他界しているので、権利書の提出ができない場合があるのは当然です。


相続の場合は、相続人側が相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を提出すると権利書がなくても相続登記を申請することができます。
相続登記の結果、相続人名義の新しい権利書が発行されますので、通常の売買と同じ方法で不動産を売却することができます。

尚、被相続人から買主へ直接売却をすることはできません。
必ず相続登記を経て買主へ売却することになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
権利書がない不動産であっても売却する方法はあることがお分かりいただけたかと思います。
しかし、権利書がない不動産を売却する場合は、予め権利書に代わる書類の作成手段について、関係者の同意を得ておくことをお勧めします。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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