家を所有したまま生活保護は受けることができる?

生活保護法の本

こんにちは、任意売却の専門家杉山善昭です。
今回は、任意売却と生活保護というテーマで話をしたいと思います。

持ち家のまま生活保護を受けることができるか?

結論から言うと、持ち家のまま生活保護を受けることができます。
但し、以下の条件を満たす必要があります。

1、著しく処分価値が高い不動産でないこと。
2、ローン返済中でないこと。
3、要保護世帯向け不動産担保型生活資金を先に利用すること。

では、「著しく処分価値が高い」とは具体的にいくらの事を言うのでしょうか?
また、要保護世帯向け不動産担保型生活資金についてはこちらの記事で詳しく解説をしています。

ある行政の事例

弊社の本店がある神奈川県厚木市の事例を挙げて解説していきたいと思います。

【生活保護制度について】
 保護に要する経費は国民の税金で賄われていることなどから、次のように各自がその持てる能力に応じて、できる限りの努力をすること、活用できる資産は生活費に充てることなど、最低限度の生活の維持のために能力や資産を活用していただきます。

◎ 働ける人はその能力に応じて働いていただき、自分の力で生活できるよう努めてください。
  (国民の三大義務の一つ:勤労の義務)
◎ 持っている現金や預貯金は、生活維持のために活用してください。
◎ 生命保険に入っている場合は、原則として解約し、返戻金がある場合は、生活費に充ててください。
◎ 親・子ども・兄弟姉妹など、民法上の扶養義務がある者(民法第877条)から、できるだけ援助を求めるようにしてください。
◎ ほかの社会保障制度(雇用保険、労災保険、各種年金、児童扶養手当、児童手当など)で、受けられるものはすべて受けてください。
◎ 自動車及び125ccを超えるオートバイの運転や保有は原則として認められません。処分して生活費に充ててください。
◎ 処分価値の高い貴金属類、有価証券などは処分して、生活費に充ててください。
◎ 土地・建物は、現在居住している場合は原則として保有が認められますが、著しく処分価値が高い場合は売却して生活費に充ててください。また、ローン付き住宅の保有は原則認められません。
◎ 自分が耕作し、収益のある田・畑は保有を認められることがありますが、耕作していない土地については、売却若しくは賃貸して生活費に充ててください。
◎ 山林・原野の保有は原則として認められませんので、処分して生活費に充ててください。
 なお、保護の要否や程度は、世帯を単位として決定します。これは、生活が困窮しているという状態は、生計を同一にしている世帯全体の問題であるという社会通念に基づくものです。
引用:神奈川県厚木市生活保護制度より

以上の通り、ローンが残っている不動産を所有したまま生活保護を受けることはできない。という事になります。
なぜローンが残っていると生活保護を受けることができないのか?

解説をする前に、誤解されやすいので触れておきますが、「借金があると生活保護の申請ができない」のではありません。
生活保護は、一定基準以上の収入がないから申請できるのであって、借金の有無とは関係がないからです。

ただし、生活保護費を借金返済に充てる事はできません。
「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長する」
これが生活保護の目的ですから、借金返済には使うことができないのです。

では、生活保護費はどのような支出であれば良いのか?
一言で言えば「最低限度の生活」を実現する為です。

抽象的ですので、具体的に挙げましょう。
1、生活扶助:食費、光熱費など
2、住宅扶助:家賃や住居の補修など
3、教育扶助:義務教育の学費など
4、医療扶助:病気ケガの治療費など
5、介護扶助:介護サービスを受ける費用など
6、生業扶助:資格や技術習得、高等学校授業料など
7、葬祭扶助:葬祭の費用
以上の7項目です。
この事から分かる通り、借金の返済に使う事は許されておりません。

個人の借金を税金で補てんする理由がないからです。

住宅ローンの残っている不動産がある状態で生活保護を受ける方法

前述した通り、基本的に不動産という資産を所有している状態では、生活保護を受けることができません。
しかし、一定の要件を満たした場合、生活保護を受けることができます。

もちろん行政によって考え方が違うので全国一律ではないことを先にお伝えしておきます。

私が任意売却の現場で実際に経験した「持ち家なのに、生活保護」を受けている人の傾向です。
●収入がない
●所有している不動産は明らかに債務超過
●精神疾患等により労働不能
●負債の返済がされていない
この要件に該当する方は、持ち家の状態で生活保護を受けることができました。
簡単に言えばこの場合、住宅ローン返済延滞により、近い将来競売で不動産を失うことが明確であるからです。

私は、市役所の職員ではないので、この条件を満たせばイコール生活保護を受ける権利が発生する訳ではありませんので、その点はご留意ください。
また、本サイトは住宅ローンの支払いが出来ない方向けですので、住宅ローンが無い方向けの記事ではありません。

借金がある場合、自己破産しなければいけないのか?

前述した通り、生活保護費は借金の返済に充てることはできません。
ということは、生活保護を申請する際に自己破産の申請が必要なのか?という疑問が湧いてくるかと思います。

結論から言うと、自己破産手続きの有無は生活保護とは何ら関係ありません。
自己破産は、現存する負債を強制的に取り立てられないようにするための法的手続きです。
従って、債務が存在しているが、返済もができず自己破産もしていないという状況でも生活保護の制度上、問題はありません。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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