不動産が競売になるデメリットはなんと21個
こんにちはアシスタントのあゆみです。
今回は、不動産が競売になってしまうデメリットについて宅建士の杉山善昭先生に解説いただきます。
先生よろしくお願いします。
はい、杉山善昭です。
住宅ローンの支払いができなくなり、競売にかかってしまった場合のデメリットについて解説していきますのでよろしくお願い致します。
このページの目次
- 1 1.一生消えない差押え登記が勝手に不動産にされてしまう
- 2 2.無理やり鍵を開けて室内調査
- 3 3.ご近所に競売にされた事実を知られてしまう
- 4 4.相場の56%で売られる可能性で残る借金が大
- 5 5.競売申立費用の分、借金が増える
- 6 6.競売情報がインターネットで公開される
- 7 7.プライバシーの配慮が不十分
- 8 8.勝手に敷地に入ったり呼び鈴を鳴らす人が増える
- 9 9.内覧実施命令が裁判所から発せられることがある
- 10 10.誰が購入するか分からない
- 11 11.引渡命令で無理やり引越し
- 12 12.強制執行(引渡命令の執行)
- 13 13.立ち退き料について何ら保証がない
- 14 14.未納税金を支払える可能性がほぼゼロ
- 15 15.法的手続きなので融通が利かない
- 16 16.払いきれなかった残債は一括請求、給料差押も
- 17 17.未納管理費、修繕積立金は落札者から請求される
- 18 18.連帯保証人への影響も大きくなりがち
- 19 19.本人が亡くなった場合、相続人に借金返済義務が発生する
- 20 20.競売情報誌に掲載される
- 21 21.誰も相談できる人がいない
- 22 まとめ
1.一生消えない差押え登記が勝手に不動産にされてしまう
住宅ローンの返済が一定期間遅れると、債権者である銀行が裁判所に不動産競売の申立てを行います。
申請を受けた裁判所は書類に不備がない限り、民事執行法により所有者であるあなたに何の承諾を得ることもなく、不動産に競売開始決定という原因で差押え登記がなされます。(民事執行法第48条)
不動産の登記簿は、法務局でお金を払えば誰でも取得できる書類です。
仮に返済が出来、競売を取り下げすることができた場合、差押え登記は抹消されますが、記載が消えるのではなく、●月●日に登記された差押えられた登記が、●月●日に取り下げにより抹消されたという記載がなされます。
つまり、不動産が差押えられたという記録は一生消えないのです。
2.無理やり鍵を開けて室内調査
競売の申立てが裁判所にされると、裁判所は執行官に現況調査命令を発します。(民事執行法第57条)
執行官は、現況調査を実施する場合、所有者の承諾を得ることなく、閉鎖した戸を開くため必要な処分、つまり勝手に鍵を開けることができます。(同3項)
ちなみに執行官は、電気、ガス、水道等の契約者の個人情報など提供事業者に要求することができます。(同5項)
ある日突然鍵を開けて入ってくるって、、、コワイですよね。
いくら住宅ローンを払っていないからってひどくないですか?
実務上は、そこまで強引ではありません。
1、執行官から手紙が来る
2、無視したり、現状調査に応じない
3、鍵を開ける予告通知
4、それでも協力が得られない場合、開錠して調査
という流れになっています。
法的処分と聞くと冷たい感じがしますが、この部分だけは配慮あるものだと私は思います。
3.ご近所に競売にされた事実を知られてしまう
2、で説明した現状調査が実施されると、調査を行うために執行官と不動産の評価をする不動産鑑定士2名が不動産にやってきます。
外観の写真を撮ったり数十分調査をすることになる為、一目につきやすいです。
また、競売が開始となると購入検討者が家の周りをうろうろしたり、居住者がどんな人なのか近隣住民にヒアリングをすることも珍しくありません。
購入者にとって、居住者がどんな家族構成なのか?どんな性格な人なのか?という情報は購入する上で貴重な情報だからです。
調査官や購入検討者の動きによって、近隣住人が競売になっていることを知ることに繋がるのです。
4.相場の56%で売られる可能性で残る借金が大
不動産の競売は不動産鑑定士が算出した本来あるべき市場価格(相場)を最初に算出します。
その上で、競売であることを鑑みた減価を行います。
買主から見た競売特有の減価要因とは?
- 内覧がしにくい
- 土地、建物に保証が一切ない
- 立ち退き交渉は落札人(買主)が行う必要がある
- 買主として得られる情報が限られている
- 入札しても購入できるとは限らない
- 見えない欠陥がある可能性が否定できない
- 動産を残して夜逃げされる危険がある
- 期限が限られている
- 住宅ローンが組みやすいとは言えない
- 購入後に無担保債権者が訪問してくる可能性も
上記の要素を全て裁判所が勘案している訳ではありませんが、競売独自の減価要因を勘案して一般的には適正価格(相場)の70%を競売の基準額として採用する裁判所が多いです。
更に、基準額の80%が入札可能額となります。
つまり、購入希望者は70%×80%=56%で入札することができるのです。
もし、他に購入希望者が現れない場合、相場の約半額で購入することができてしまうのです。
安く売られてしまうことは、イコール所有者の借金が増加することになります。
5.競売申立費用の分、借金が増える
競売手続きは裁判所の法的手続きと前述しましたが、法的手続きにも費用が必要となります。
一例として東京地裁の例を紹介しましょう。
- 申立手数料:4,000円
- 予納金:債権額2,000万円未満80万
債権額2,000万円以上5,000万円未満100万円
債権額5,000万円以上1億円未満150万円
債権額1億円以上200万円 - 郵便切手代:84円+10円切手(重量のよる増額あり)
- 差押登記の登録免許税:債権額の1,000分の4
以上が裁判所に納付する金銭です。
その他に、債権者が裁判所に競売の申請をするための書類作成費用も考えられます。
先生、競売の費用って銀行が払うんじゃないんですか?
申請時には銀行というか債権者が払うのですが、住宅ローンの契約書に
「競売になった場合の費用は債務者負担」という契約になっているのです。
6.競売情報がインターネットで公開される
不動産競売物件情報サイトというインターネットのサービスがあります。
最高裁判所から委託を受けて,株式会社日立社会情報サービス社が提供しているウェブサイトで合法です。
このサイトは、日本全国の裁判所における不動産競売情報が全て入手可能です。
7.プライバシーの配慮が不十分
6.で挙げた、不動産競売物件情報サイトには、各裁判所の競売情報からそれぞれの競売不動産の情報をダウンロードすることができます。
3点セットというのですが、物件明細書,現況調査報告書及び評価書が入っており、その中の現況調査報告書には、不動産の外観の写真だけではなく室内の写真も掲載されています。
個人名が入っている写真はないものの、室内の生活状態が丸わかりな写真は十分にプライバシー配慮をしているとはとてもいいがたいです。
なぜ、室内写真が掲載されているかというと、一般の不動産内覧とは違い、内覧のハードルが高く購入検討者が室内の状態を把握しにくいという理由からです。
8.勝手に敷地に入ったり呼び鈴を鳴らす人が増える
競売にかけられた情報を知った人が不動産に訪れます。
訪れるのは購入検討者ばかりではなく他にも複数いるのです。
競売情報を見て訪問する人
- 購入検討者
- 不動産業者
- 貸金業者
- 債務整理請負業者
- 引越業者
- 不用品引取り業者
- その他
9.内覧実施命令が裁判所から発せられることがある
いろいろなサイトに「競売物件は内覧ができない」という記述がありますが、正しくありません。
民事執行法第64条の2に「執行裁判所は、差押債権者の申立てがあるときは、執行官に対し、内覧の実施を命じなければならない。」という規定があります。
つまり、競売を申し立てた債権者が内覧を申請すれば内覧は可能。
という事になります。
実務上、債権者が内覧実施を申し立てることはめったにありませんが、内覧した方が高く売れる可能性が高いですので、今後債権者が内覧実施をする可能性は否定できません。
債権者が内覧申請したのにもかかわらず、所有者拒んだ場合、競売後の債務の取り扱いについてより強い改修方法が選択される可能性も否定できません。
そういった要素を踏まえて、内覧実施命令が発せられた場合の対応を考える必要があります。
10.誰が購入するか分からない
一般の不動産の売却の場合、購入検討者が内覧をするので、接触する機会があり、大体どんな人か把握することができます。
しかし、不動産の競売の場合、事実上内覧制度がないため、ある日突然知らない人がやってきて「私がこの家を購入した」と言われるのです。
どこの誰だか分からない人ですし、どんな目的で購入したのかも、いつ退去せよと言われるのかも、退去しなかったらどんな対応をするのも、何もかも分からないという状態。
かなり気持ち的に大変になることが予想されます。
11.引渡命令で無理やり引越し
競売不動産の落札人は,代金納付の日から6か月以内であればいつでも、引渡命令の申立てをすることができます。
引渡命令正本が送達された日の翌日から1週間以内であれば,執行抗告という不服申立ができますが実務上まず認められることはありません。
引渡命令が出された場合、居住者はこれを拒むことはできません。
先生!例えば病気の母がいるとかでもダメですか?
残念ながら、ダメです。
じゃあ、今賃貸物件を探しているのでチョット待ってください。というのならどうですか?
民間の話し合いならアリですが、ダメです。
そもそも民事執行法は、債権者の貸金を適法かつスムーズに回収するために作られた法律です。
債務者を過保護にするものではないのです。
12.強制執行(引渡命令の執行)
11で挙げた引渡命令が発せられたにもかかわらず、居住者が落札人に対して不動産を引き渡さない場合、落札者は強制執行という手続きにおいて、引渡しを強制することができます。
これを断行というのですが、引越業者のような執行業者が来て、裁判所の執行官の指示により室内に入り室内の動産を全て室外に運び出します。
鍵が施錠されている可能性が高く、居住者が反抗する可能性も考えられることから、執行官や執行業者の他に、鍵業者、警察、不動産会社、弁護士等が立ち会うことも多く、かなり物々しい雰囲気となり、近所の住人も野次馬的に集まってきます。
まさに見世物状態になってしまいます。
13.立ち退き料について何ら保証がない
普通の賃貸住宅で立ち退きとなれば、立ち退き料なる金銭的保証があることが良くあります。
しかし、競売の場合は全く違います。
前述した引渡命令や強制執行をするしないにかかわらず、居住者の引越について何ら保証はありません。
新しく賃貸住宅を借りるための費用、引越業者に払う費用などは全て自己負担となります。
12の強制執行をした場合、落札人から当該強制執行にかかる費用を請求される可能性も高いです。
14.未納税金を支払える可能性がほぼゼロ
住宅ローン不払いによる担保不動産強制競売と未納税金の関係は、民事執行法と滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律という二つの法律に基づき規定があります。
ここでは詳細の説明はしませんが、ほとんどの住宅ローンは税金よりも力が強く、競売によって売却された金額は未納税金ではなく、先に住宅ローンの返済に充当されます。
従って、未納税金に充てる売却代金はなく(4の理由により)、結果、家を失っても未納税金はそのまま。という可能性が高いです。
15.法的手続きなので融通が利かない
競売の手続きは民事執行法によるもので、個人的な事情は勘案されない手続きです。
16.払いきれなかった残債は一括請求、給料差押も
競売によって不動産が無くなった。だから借金も無くなった。とは残念ながらならないのです。
日本の住宅ローンはリコースローンといい、仮にその不動産の売却代金で返済が全額できない場合、払いきれない借金はそのまま残り、返済の義務が発生することになります。
しかも、既に分割払いの権利を失っているため、一括で債権者に払う義務が生じています。
一括で払えない場合、債権者は債務者の他の財産から回収することが認められているのです。
17.未納管理費、修繕積立金は落札者から請求される
不動産がマンションの場合、毎月管理費、修繕積立金の支払い義務が発生しています。
競売の資料には現況調査を行った際に未納管理費等がどの程度生じているか?について調査資料があり
競売の落札人が引き継がなければならないこととなっています。
競売不動産を落札した落札人は、未納管理費等を管理組合に支払う義務がありますが、この支払はあくまで旧所有者が未納だった管理費等を新所有者が立替払いしたに過ぎません。
従って、新所有者が立て替えた未納管理費等は旧所有者に請求をすることができるのです。
18.連帯保証人への影響も大きくなりがち
4や5により、競売で売却されることにより、売却後に残る負債が多ければ多いほど、連帯保証人にかかる負担も大きくなります。
16で説明した通り、競売後に残った負債は一括返済が義務となります。
毎月●万円を分割払いする。という希望を連帯保証人が持っていても、それは要望であって権利ではないため、債権者がNoと言えばそれまでです。
連帯保証人が換金処分できる自宅等の不動産があれば、売却して支払わなければいけない可能性が高いです。
19.本人が亡くなった場合、相続人に借金返済義務が発生する
競売で不動産を失った後、残った借金を自己破産して処理をしない場合、その負債は残り続けることになります。
負債が残っている状態で、債務者である本人が他界した場合、相続人に負債が相続されてしまいます。
相続人が負債の存在を知っている場合、相続放棄をすることができますが、負債の存在を知らずに相続をしてしまい、負債が発覚したころには、相続財産を使い切ってしまっていた。という場合などは事実上相続放棄が不可能になることもあります。
20.競売情報誌に掲載される
6のインターネットで競売情報が公開されることについてお話しましたが、インターネットで公開される前の情報を掲載している専門誌があります。
21.誰も相談できる人がいない
これが一番精神的に大きいデメリットだと思います。
競売にかかっていることだけを相談できる専門家はいません。
え?
弁護士とか銀行とか、不動産屋さんとか、、、いろいろ居そうですけど違うんですか?
はい
弁護士は負債の返済についての専門家で、競売の進行についての専門家ではありません。
銀行も貸金の話ではなく、競売の進行の相談をすることはできません。
不動産会社は、任意売却をする上で競売のアドバイスをすることはできますが、競売だけのアドバイスを求めることはできないのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
お持ちの不動産が競売にかけられてしまうデメリットを解説してきましたが、おそらく今まで気が付かなかったこともあったのではないでしょうか?
端的にお話しすると、競売よりも任意売却を選ぶことをお勧めします。
任意売却を選択すると競売の多くのデメリットを回避することができるからです。
競売って何となくデメリットがあるんだとは思っていましたが、想像以上に沢山あることが分かりました。
やっぱり一日も早く任意売却をするために杉山先生に相談した方がいいですね!
はい。
競売と任意売却は時間との闘いです。
一日早く動きだすと、その分選択肢も残された時間も有効に使うことができますのでご相談下さい。
この記事を書いた専門家
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(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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