個人事業者の任意売却。経営判断をしないことで500万の損害が発生

お金を失う男性

今回のご相談者さんは52歳男性、妻、子供、両親と同居。
福岡県福岡市の二世帯住宅に居住。

事業に失敗、高齢の両親を抱え多額の負債と未納税金

土地は父親名義、建物は父と相談者の共同所有。
二世帯であるが、中で世帯が分かれている。

自らが代表を務める法人で17年やってきたが、事業がうまく行かずついに休業に。
現在は、違う事業を立ち上げようやく売上が徐々に上がってきた状態。

ただし、毎月の返済(13万円)を支払うゆとりはなく、住宅ローンは現在5か月遅れ。
父親は相談者の連帯保証人であり、土地は住宅ローンの担保になっている。

先日銀行から遅れている返済をせよと督促があったようだが、その書類を見ておらず連絡しなかったところ、銀行は債権管理回収会社の何とかという所に取立を依頼してしまった。

高齢の親に今更、引越しをすることなど言えるはずもない。
何とか話し合って、分割払いを認めてもらわないと大変なことになる。

そう考えた相談者。
高齢の両親がいるので、何とかこれからも返済を続けていきたいと返済口座の銀行に掛け合ったが、「債権管理を移管したのでそちらと話しをして下さい」と取りつく島もない。
今度は債権管理回収会社に連絡するも、手続きが進んでいるので今から分割返済には応じられない。とこちらも全く話にならない。

こんなに苦労して払っているのに、今まで二十年近く払ってきたのにどうして話も聞いてくれないのか!?

どうしようか考えがまとまらない内に今度は、未納税金の督促。
その額1,000万。

自分ではもう、どうしたら良いのか分からない。
親の悲しむ顔を観たくない。もう競売になるのを待つしかないのか?
なぜみんな助けてくれないのか?
まだ何か方法はあるのか?

無傷でクリアする方法を探し続けると

今回の問題は、一にも二にも未納税金です。
延滞金を入れて1,000万は非常に大きな要素。
おそらく半分くらいが元の税金で残り半分が延滞金です。

いろいろな事情があったことは想像に難しくありません。
ご家族、両親を抱えていますので、仕事が赤字でも生活費は削れません。

ついつい、税金が遅れがちになり。。。
自然の流れです。ついついそうなってしまうのは無理のないことです。

本来払わなければいけない税金を払わないで、生活費の赤字に回すのは非常にやりやすい資金調達方法です。
借入の為に銀行をまわる必要もありませんからね。

私自身も税金を払わず、他の支払いをした経験を持っています。
ただし、この方法はあっという間に雪だるまのように膨らんでしまうのです。
私も完納するのにどれほど苦労したか、今でもはっきり覚えています。
もちろん、払わない自分が一番いけないことは言うまでもありませんが。
そういう経験をしているので、このご相談者さんがどれだけ身を切る思いをしたか、自分の事のように理解できます。

さて、こんな状態の場合、どうすれば良いのでしょうか?
本来は、税金が1,000万も溜まってしまう前に経営的判断が必要でした。

端的に言えば、経営判断が遅すぎたと言わざるを得ません。

誤解していただきたくないのは、犯人探しをしているのではない。ということです。
数年前に経営判断して売却していれば、今よりも確実に傷口が少なくて済んだことは言うまでもありません。

延滞税の分だけ丸損です。
このケースでは、経営判断をしなかったことで約500万円もの損害が発生したのです。

なぜ私がこの話からしたか?

このご相談さん。
「困っている自分の視線」しか持っていないのです。

その為、これだけ自分が困っているので誰かが何とか助けてくれる方法を教えてくれるだろう。という意図が伝わってしまうのです。

根本的には、事業の失敗したのは誰でもない自分自身が原因です。
税金を払わずに放置したのも自分自身です。

今、困窮した状態に陥ったのはほかでもない自分自身が原因です。

犯人探しをするつもりも攻めるつもりも全くありませんが、まずはこの現実を受けとめていただくことからスタートしないと話しが進みません。

もし貸している立場にたったらどう思うか?
もし未納税金徴収をする市役所の担当者だったらどう思うか?
それぞれ立場があり、立場なりの思考をします。
相手があることですから、自分だけの思いではなにも解決しません。

任意売却は、それぞれの立場の人の意見を理解し、提案をするからこそ実現するのであって、自分だけの都合でものは進みません。

  • 家を手放さなくてもいい。
  • 住み続けられる。
  • これから先も分割払いでやっていきたい。

こんな都合の良いことが全て当たり前にできる訳ではないのです。

具体的な解決方法ですが、債権が銀行から移ってしまっているので今まで通り分割で払うことはできません。

従って、「残額を全額用意して払う」「競売にする」「任意売却にする」という三つの方法から選択することになります。
経済的に、「残額を全額用意して払う」は困難だと思いますので、事実上「競売にする」「任意売却にする」の二択になります。

居住し続けるためには投資家に売却していわゆるリースバックをする必要がありますが、リースバックをするためには、投資家に売却しても全額負債を返済できるか?がポイントになります。

全額返済できなければ、投資家への任意売却は事実上できません。
その為、今回のケースではまず通常の任意売却をしたらいくらくらいの価格になるのか?
投資家に売却したらいくらくらいになるのか?を算出する所からスタートすることになります。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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