税金申告漏れ!追徴課税逃れの任意売却はできるか?

税務署

自営業を営んでいるというK様からのご相談。

税務調査が入り、申告漏れが発覚。
意図的な脱税という判定までされ、マックスの7年前まで、遡られた挙句、追徴の税金は400万円オーバーに。

幸い、不動産の査定は1,500万円程度で、残っている住宅ローンは800万円程度、売れば、お金が残る。
税務署に不動産を差し押さえられる前に、任意売却してしまいたい。
今回のご相談はこのような状態です。

あなたは、どう思いますか?

脱税の際にかかる税金

今回のケースは、個人の自営業ですから、確定申告という事になります。
売上から経費、各種控除費用を引いた残りに対して、所得税という税金がかかります。
申告漏れというのは、一般的に、売上過少申告、つまり、本来あった売り上げをワザと抜かして、売上を減らすパターンと
架空経費申告、つまり、本来経費にならないものを経費経常して、利益を減らすパターンがあります。
【所得税】
従って、本来納付すべき、所得税がまず追加で課税されます。

【延滞税】
こちらは、本来納税すべき税金を、納税しなかったことによる遅延のペナルティーです。
延滞税の計算は、年度によって違うので、国税庁のホームページでご確認ください。

【加算税】
過少申告による加算(ペナルティー)税です。
こちらは、追加納付額の10%です。
分かりやすいですね。
但し、加算税の額が、当初納付した本税、又は50万円のいづれかを超える場合、超える部分については15%となります。

【無申告加算税】
こちらはレアかもしれませんが、そもそも申告をしていなかった。つまり、無申告の状態です。
5%~20%の無申告加算税が課せられます。

【重加算税】
過少申告加算税、不納付加算税、無申告加算税に代えて課せられるので、重複はしないのですが、追加納付額の35%~40%という非常に高額なペナルティーになっています。

税務署以外にも・・・

税務署が課税する税金を前項で説明しましたが、それだけでは終わらないのです。

市役所。

住民税や、国民健康保険にも影響を及ぼします。

税務調査が入って、所得が増えた分、当然、市県民税が増えます。
国民健康保険は、上限があるものの、やはり追加納付をしなければなりません。

子供手当の受給額が減額になる場合、返納しなければいけない可能性もありますね。

お金がないは通用するか

財布の中身を確認する女性

申告漏れを指摘され、追徴課税の額が決まると、「そんな税金払えない!」という納税者が多いようです。
以前、税務署の知り合いに聞いた話ですが、そもそも税金は利益に対して課税されるので、お金がないは通用しない。そうです。

税務署は、税務調査に入る前に、銀行の入出金明細などを銀行から取り寄せて、大体の収支を把握しています。
つまり、どこにどんなお金があるかほぼ把握している。という事になります。

従って、申告漏れを指摘されてから慌てて、財産を隠したりする行為は、自殺行為です。

ちなみに、差し押さえられる財産としては、
・現金
・給料
・不動産
・売掛金
・動産(車、テレビ等)
・有価証券
・生命保険
などが挙げられます。

破産したら?

自己破産という言葉を聞いたことが、一度はあるかと思います。
手続きは裁判所で行いますが、簡単に言うと、借金を合法的に払わずに済む法律的な手続きです。

従って、いくら負債があっても、自己破産してしまえば、その後負債を払うことを強要されません。
但し、未納税金に関しては、自己破産しても免責になりませんので、未納の税金は残ることになります。

破産手続きは、自分自身でもできますが、専門的な書類が必要ですので、専門家に頼むことが多いです。
依頼する専門家は、司法書士か弁護士です。

司法書士は書類の作成だけですので、自分で裁判所に出向いて手続きをする必要がありますが、その分費用は安くなります。
一方弁護士は、代理兼があるので、ご自身で裁判所に出向く必要はほとんどないと思いますが、その分費用は高くなります。

分割納付の基本的な考え方

追徴された税金を一括で払えないので、分割で払えないか?
そう思うのは、自然なことです。

残念ながら、追徴された税金を分割で払う権利は、ありません。

表現が適切でないかもしれませんが、税務署としては「仕方なく分割で払ってもらう」という実務上の処理をすることがあります。
よく誤解されやすいのですが、分割払いの権利が確保されている訳ではないので、分割払い中と言えども、財産の差押等が予告なくなされることがあります。

従って、「分割払いをしているのに、なぜ財産を差し押さえたんだ!」とクレームを言っても、筋が違う。という事になります。
更に解説すると、例えば、未納税金が100万円あって毎月1万円納付をしているような場合、税務署や役所の本音は、「分割納付しているうちに入らない」と考えています。

1年以内に完納できる分割納付以外は、分割納付のうちに入らないのです。

何故かというと、税金は基本的に毎年発生するものです。
過去の税金を一年以内に完納できないと、新しい税金が発生し、また未払いが。。。というスパイラルに陥ってしまうことになります。

分割納税をする際に、一番気を付けなければいけないことは、「払っている気にならない」という事です。

例えば、延滞税が毎年20万円発生している状態で、月々1万円払ったとしても延滞税にも満たないですよね。
完納できないような分割払いは「払っている内に入らない」のです。

根本的に考えること

かなりの方が、気が付いていないことですが、事業をしていて、未納税金が増えていく。という事は、イコール「その事業そのものが成り立っていない」とう事を意味します。
本来は、売上-経費-税金=生活費となる訳ですが、
売上-経費-生活費=0 税金払うことができない。

これでは、事業も生活も成立しませんよね。

「せっかく始めた事業だから」「この仕事辞めたら食べていけない」という話をよく耳にします。
しかし、厳しい言い方ですが、「そもそも、その事業をやっているから食べて行けない」という認識を持つことが必要です。

結局、任意売却はできるのか?

住宅が売れるか疑問に思う男性

税務調査が入って、申告漏れの指摘をされた段階で、任意売却をすることは、現実的に不可能と思って下さい。
任意売却は、販売して、買主が決まり、売買契約、引越、買主への引渡代金受領。というプロセスを踏みます。

つまり、相応な時間がかかるのです。

もし、明日引渡という状態で、不動産の差押がなされたら・・・
買主に引き渡すことができず、売買契約違反で、買主へ損害賠償をする羽目になるかもしれません。

また、税務署から、財産隠しとみなされる可能性も否定できません。
財産隠しをするための脱法行為に加担することは、もちろんできません。

やるなら正々堂々と、売却する。
つまり、追徴額も決まった段階で、納税のために、不動産を売却する。という意思表示をして行うことです。

もっとも、実際の売却可能額が、住宅ローンや未納税金の合計額を下回っていると、任意売却のハードルが非常に高くなりますので、注意が必要ですが。
自分の場合はどうなんだろう?と思ったらご相談ください。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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