任意売却する際、家の中にある荷物は片付けるべき?
先生今回のお話しはゴミ屋敷を売る話でしょうか?
ゴミ屋敷という言葉が適切か分かりませんが、任意売却の現場では大量の動産があふれているケースが散見されます。
片づけるだけでも一苦労ですが、不動産売却と動産の関係について今日は解説したいと思います。
任意売却をしたいけれど、家の中にたくさん不用品がある。この荷物一体どうしたら良いのだろうか。。。
家を手放そうとするとこんな悩みも浮かぶのも自然かもしれません。
このページの目次
荷物を片付けないで家を売りたい
実際のご相談事例
先日、任意売却のご依頼があった神奈川県厚木市の物件。
先日裁判所から競売開始決定なる通知が家に届き、数日後に裁判所の職員らしき人から、
「家の中を見せてください」という連絡が入った。実はその相談者さん、離婚したことをきっかけに引越をし数年が過ぎている。
あまり良い思い出がないので、ほとんど寄り付かないという。
荷物が置きっ放しになっているので、そのままで良いのか?
というご心配をされていました。
兎にも角にも、見てみなければ分からないので「まずは見せて下さい」と申し上げ現地の状態を拝見することに。
部屋を開けてすぐに目に飛び込んだ光景。「た、確かに・・・このままではちょっと」という状態でした。
たまにテレビで「○○屋敷」というようなテーマで特集が組まれている番組に出来るような。
床が見えない状態と言えば、そのレベルが伝わるでしょうか?
とてもじゃないけれどこのままでは売れません。
といっても、片付ける費用もありません。さてどうするか?
内覧の際は荷物を処分しない方が良い
裁判所の執行官による現況調査は、まだこれから。
仮に片づけることができとしても、調査の前に片付けるのは得策ではないのです。
お金を出してこの時点で片付けをしても、競売で売れた金額から片付け代を受けとることはできないからです。
先生!ごみを捨てたお金の領収書とかを出せば売れた代金からもらえても良いと思うのですが、、、違うんですか?
競売で売却できたお金で全ての債権者に支払いをすることが出来てあまりのお金があるのなら、手元にお金が残るので、ゴミを処分したお金に充てることができるかもしれませんが、売却代金で全ての返済ができない場合、ごみ処分費を受け取ることはできません。
競売の速やかな進行の為には、室内を片付けたほうが良いの確かです。
しかし、それは裁判所や債権者にとってメリットが出るだけの話です。
片付け代をかけても依頼者にとってメリットはありませんから、「現況調査前に片づける必要はありません。」とアドバイスをしました。
実際、国税局のネット公売ガイドラインでは「税務署長等は、現実の引渡しの義務を負わない」となっています。
片づける必要がないもう一つの理由があります。
それは何か?
不用品であふれた室内の状況を債権者が理解すれば、「あぁ売却するのが大変そうだな」と伝わります。
大変な状況が伝われば債権者も無茶な要求をしにくくなります。
先生、債権者が無茶な要求をするってどんな要求をするのでしょうか?
任意売却の販売価格は事実上債権者が決めるのですが、状態が良くない不動産だと分かると、高くは売れないなと感じ、結果要求される販売価格が抑制できるのです。
この物件は現況調査後に、荷物をざっくり端に寄せ内覧だけはできる状態にすることに決定しました。
先生!普通の売却ならなるべく綺麗にしていたほうが売れやすいですよね?
不利になりませんか?
その通りです。
今の話は、あくまで裁判所や債権者との間の話です。
実際に販売活動する際は、片づけた方が良いことは言うまでもありません。
通常の売却なら販売開始時に片付いていないと内覧時の印象を下げます。
任売の場合はそのままの方がいい。という訳ではありませんのでご注意下さい。
うちは汚いから売れない、は間違い
ウチなんてとっても汚いから、そもそも売れないんじゃないか?
と思っている人も多いような気がしますが、実際はどうなんでしょうか?
結論から言うと、大丈夫です。
ピカピカじゃないと売れないということはありません。
中古の家ですから、多かれ少なかれ汚れていたり、傷んでいることは普通です。
本来、家の内外の荷物は無いほうが売りやすいのです。
しかし、必ずしもきれいに片付けないと売れないということはありません。
ウチは汚いので「売れないんじゃない?」と諦めかけている方でも、ご遠慮なくご相談くださいね。
荷物を片付けないで家を売る方法
家の中に不要な荷物がたくさんあります。そのまま売れますか?
実際のご相談を受けてる場面でこのようなご質問を受けることがあります。
結論から言うと、できる場合とできない場合があります。状況次第です。
任意売却で家を売る場合なら可能かもしれません
一般の不動産売却をする際、室内の動産を売主が撤去することは「当たり前」です。
売買契約書にも「売主は室内外の動産を全て撤去して買主に引き渡すものとする」という取り決めがされます。
一方、任意売却の場合は「契約条件」を一般の売買とは別の条件に変えてしまう事もあります。
「売主は室内外の動産を撤去せず買主に引き渡すものとする」といった趣旨の取り決めをするのです。
という事は、片づけない状態でも買ってくれる人を探すってことですか?
そうです。売却する契約をした後で、「やっぱり片づけない」とすることはできませんが、最初から「片づけない」という条件で売買をするのはアリです。
但し、注意する点がありますので次項以降で解説しますね。
ただし、売主には損が出るリスクがあります
例えば、自宅の販売価格が6,000万円、住宅ローンの残債は5,000万だとしましょう。
不用品の処分代の見積もりを取ったら50万円だったとします。
この場合、不用品を買主が処分するという条件を付けて売るのならば、買主は最高でも5,950万円で購入すれば計算が合う事になります。
売主としては5,950万円で売却しても残債は5,000万円ですから、手元に残るお金が減るだけで大勢に影響はありません。
このような状態であれば、「不用品を残した状態」で売却することができるでしょう。
但し、買主としてはむしろ損です。普通の不動産を購入すれば、不用品がない状態で引き渡されますから、
6,000万円から50万円引いてもらうだけでは手間がかかる分だけ損することになります。売主にとっては手間が省ける分だけ得することになります。
その為、不用品をそのままで売却する場合は、実費以上に価格を引き下げないとバランスが取れません。
従って、この場合であれば、実務上、売買価格を5,920万円とか5,900万円にするというような協議をすることが多いです。
不用品をそのままにして売却すると、売主にとってみれば実費以上に損が出るという事になります。
任意売却で負債が全額支払えないのなら難しい
先ほどの例は、売却すればお釣りがくるケースでした。
では次に売却しても残っている住宅ローンが全額払えない場合について解説をします。
例を挙げたほうが分かりやすいと思います。
自宅の販売価格が6,000万円、住宅ローンの残債は7,000万だとしましょう。
不用品の処分代の見積もりを取ったら50万円だったとします。
この場合、不用品をそのままにして売ろうとすると、売買価格は高くても5,950万円です。
この場合、一般的に売却する場合は、不足の1,050万円をどこからから資金調達してこないと売却することができません。
※本当は他にも売却経費がかかりますが、ここで諸経費の話は本題ではないので省略しますね。
住宅ローンの返済が遅れていることにより、任意売却をする場合は、不足の1,050万円を用立てすることなく、売却をすることができますが、
しかし、債権者は不用品を自分で片付けば6,000万円で売却できるのだから6,000万円返済せよと要求します。
不用品は自分で捨てるのが当然なので、50万円の費用を認めません。
これは立場が変われば分かると思います。
もし自分がお金を貸している立場で、お金を返さない人が、ゴミを捨てるのが面倒だから処分費用を出してほしい。と当たり前のように言ってきたら。。。
私がお金を貸している立場だったら絶対怒ります!!!
それはそうですよね。
ゴミがあるけど面倒だから捨てたくない。
だから安くしか売れないけどいいって聞かれたら普通気分を害します。
つまり、不用品をそのままにして売却ができるかどうかは?とどのつまり、負債を全部返済できるかどうか?がポイントになります。
家を売っても負債が残る場合は交渉次第
先生!
売っても借金が払えない場合、家にある荷物は全部自分で片づける必要があるって言う事ですね?
全てのケースで絶対にそうだとは言い切れません。
過去にも処分代を売却代金から捻出することに成功したケース。
実はあるのです。
POINT
任意売却時、売買代金から不要品の処分を出せる場合「も」ある。
但し、ハードルは少々高め。
売却しても負債が返せない。
所有者が自分自身で不用品を捨てる努力もしした。
でも、どうしても処分しきればいものがある。
そこで一つご相談なのですが、、、と債権者に交渉をする。
普通は認めない部分の債権者と交渉をするのが私の仕事でもあります。
但し前述した通り、本来ゴミを捨てるのは所有者の義務です。
義務をやらずして、債権だけ泣かせようというのはやはり無理が生じます。
先生!
売却代金から払う交渉ができた場合とうまく行かなかった場合の話を聞きたいです。
そうですよね。
お気持ちはよく分かりますが、●●だとOKみたいな単純なものではないんですよね。
過去の事例から傾向をお話しすると、売却代金だけでは負債が完済できない任意売却の場合、ほとんどで不用品処分費用は売却代金から支払う事はできません。
しかし、数少ないですが不用品処分代金を捻出できた事例がありますのでご紹介しておきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
家の中にある荷物は、片づけるが基本となります。
但し、状況によって「片づけなくても売却ができる」ケースがあります。
複合的要素で変わってくるので、一概には言えません。
ご自身でできるだけ片づける努力をする。
結果、どうしても無理な物は交渉で対応する。
また、片づけるにしてもタイミングが重要であることも大切です。
おかれている状態によってどのタイミングで片づけるのがベストなのか?
片づけない売却方法があるのか?など、専門家が相談に乗りますので、ご相談下さい。
この記事を書いた専門家
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(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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