借地権の中古戸建任意売却成功事例

女性と歩く男性高齢者

今回ご紹介するのは、借地権の任意売却のお話しです。
無事成功しましたが、過去を振り返っても5本の指に入るタフな案件でした。

借地権の任意売却の難易度

今更言うまでもありませんが、借地権とは他人の土地を借りて建物を建てる権利です。
借地権といっても二つあり、「地上権」と「賃借権」という種類があります。

地上権の方は法律的に「物権」として扱われます。
所有権、地役権、抵当権という権利と同列で、自由に売買をすることができます。

一方、賃借権は物権ではなく、「債権」になります。
賃借権は、賃貸借契約という契約に基づいて発生する権利だからです。

世の中にある、借地権のほとんどは、賃借権になります。

地上権と賃借権の一番の違いは、譲渡する際地主の承諾が必要となるか否か?です。

地上権:地主の承諾不要
沈着兼:地主の承諾必要

となります。

従って、借地権を売却しようとする場合、地主の承諾が必要になります。

この地主の承諾を得る事ができるか?が任意売却を実現するための一番のポイントになります。

地主の承諾取得のハードル

では次に、借地権の譲渡の為に地主の承諾を得る際にハードルとなり得る点について解説しましょう。
法律に明記されている訳ではありませんが、賃借権の借地権を売却する際、地主に名義変更料を支払う慣習があります。

一律いくらという規定はもちろんありませんが、借地権価格の10%前後となるケースが多いです。
今回の事案においても、相場通りとなったのですが、問題は借地権価格をどう算出するか?という点。

地主側は極力借地権価格が高い方が良いと考えますし、賃借人側は逆です。
利害が相対するので非常に調整が難しいポイントです。

今回は事前に十分なリサーチをして臨みました。
地主側にも不動産会社が入っていたので、地主側不動産会社が地主に説明しやすいように資料を作りました。
細かい点については守秘義務があるので、ここでご紹介できませんが、この後出て来る、更新料、賃料の件も含めてこの説明資料の出来が、結果を左右する非常に重要なポイントです。

地主の承諾が得られない場合

今回は、交渉の結果、借地権譲渡の合意を取り付ける事ができました。
しかし、中には第三者への譲渡を承諾しない地主も一定数存在します。

筆者は運の良い事に過去受任した借地権案件で承諾が得られなかった事はありませんが。

地主の承諾が得られない場合、売却できないのかというと法律は救済措置を設けています。
地主に代わる許可を裁判所が出すことができます。

但し、裁判所が許可を出すような事態は、望ましいものではありません。
表現を変えれば、合意が取れず揉めている不動産を購入しようとする人は少ないからです。

その他の障害

杖をつく男性

今回の借地権売却案件。
他にもハードルがありました。

更新料

今回、売却のタイミングでちょうど借地権の更新を迎えました。
前述した譲渡承諾の費用とは別に、借地権の更新料をどうするか?についても交渉が必要でした。

こちらも支払いをしなければいけないという法的根拠はありませんが、慣習として支払われています。
判例を見ても、更新を認める代わりに更新料の支払いを命じた判決があります。

相場ですが、所有権価格の5%前後が多いです。

賃借料

借地の更新のタイミングで良く出る話が、賃借料です。
地主側はほぼ必ず、賃借料の改定を希望します。もちろん金額upです。

賃借料の相場は固定資産税の3~5倍が目安となります。
と言っても固定資産税は、原則地主しか知ることがで機内情報です。

ところが以前は賃借人が土地の公課証明を取得することはできませんでしたが、法律が改正されて賃借人が取得することができます。
この改正は画期的なものだと筆者は思います。
※公課証明:不動産の固定資産税、都市計画税の課税額を証明するもの。東京都は関係証明と呼びます。

今回もこちらサイドで課税額の調査をしたところ、現在の賃借料を上げる必然性がなかったので根拠を示し交渉しました。

賃借料の増額は極力阻止する必要があります。
何故かと言うと、賃借料の増額は買主の負担を増加するネガティブな要素になるからです。

更に言うと、借地権は他人の土地を借りる権利ですから、同じ借地なら賃借料が低ければ低いほど、借地権としての価値は高くなるのです。
従って、うっかり賃借料の増額の承諾すると数百万円レベルで損をすることになりかねませんので、今回の交渉もこの点だけは絶対に阻止するべく取り組みをしました。

債権者との交渉

いうまでもなく、今回は任意売却ですから債権者との交渉もあります。
売却に必要となる経費(仲介手数料や名義変更料等)を売却代金から支払いができるように交渉をするのですが、当然正当な金額しか認められません。

必然的に、名義変更料等の地主へ支払う費用について地主だけでなく債権者にも同意を得る必要があります。
但し、債権者が更新料や名義変更料を売却経費として認めない。という事もありますので、この点についてはケースバイケースという事になります。

借地権の任意売却まとめ

いろいろな障害がある借地権の任意売却です。
一般の不動産よりも時間がかかるケースが多いので、住宅ローンの支払いが遅れてから動くよりも、返済が遅れる前からスタートすることが望ましいです。

また借地権は所有権の不動産に比べて価格が安いです。
価格は安いですが、手間が2倍かかります。
債権者との交渉も入れれば3倍かかります。

手間がかかる割に価格が安いので、結果不動産会社の収益である仲介手数料も安くなってしまいます。

手間がかかるのに安い報酬しか得る事ができないので扱わないという不動産会社も多いです。
借地権の取引は難易度が高いので取扱をしていないという会社もたくさんあります。
そもそも任意売却業務を扱っていない不動産会社も多いです。

そんな中、当事務所は借地権の任意売却も扱っています。
儲からない仕事をなぜするのか?とお感じになるかもしれません。

しかし私は、そもそも仕事は人助けだと考えていますし、「誰にでもできる仕事でない難易度の高い仕事をしたい」と考えています。

今回ここに書いたこと以外のハードルもありましたが、無事完了して依頼者に喜んでいただいたことをうれしく思います。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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