任意売却すると自己破産できないのか

あゆみ

こんにちは、アシスタントのあゆみです。
今回は、「弁護士から任意売却すると自己破産ができないと言われたのですが、本当ですか?」という相談がきました。
杉山先生ズバッと解説をお願いいたします。

杉山先生

はいこんにちは、杉山善昭です。
任意売却すると自己破産できないのか?
今回は先に結論を書きますね。
「できます」

あゆみ

えっ!
そんなに簡単にできるって言ってしまって良いのですか?

杉山先生

但し、話はフクザツなので解説していきます。
必ず最後までお読みいただければと思います。
動画でも解説しています。

自己破産=支払い免除ではない

まず最初に覚えていただきたいことがあります。
それは、任意売却=自己破産不可ではない。ということです。


置かれている状況によって違うのです。
自己破産は破産法という法律によってすることができる手続きですが、自己破産を申し立てただけでは十分でなく、その債務を免責(支払わなくても良い)を受ける状態まで行かないと借金から逃れることができず意味がありません。

あゆみ

うーんと
自己破産は、もう借金が払えない!と宣言するもので
免責は、払えなくなった借金を払わなくていいよっていうことですか?

杉山先生

まさにその通りです!

POINT

  • 自己破産は申し立てるだけでは借金が免責とならない
  • 支払いの義務から解放される手続き(免責)まで進める必要がある

自己破産が難しいケース

では、どのような場合に自己破産に支障が出るのか?考えていきたいと思います。
ここでは自己破産しても免責が認められない債務を説明しましょう。

  • 税金等の租税公課
  • 養育費や扶養義務
  • 不法行為に基づく損害賠償債務(一部)
  • 罰金等
  • 隠した財産
  • 浪費やギャンブル
  • 返済不能状態で新規の借金をした
  • 過去7年以内に自己破産をした
  • 偏波(へんぱ)弁済

他にもあるのですが、このくらいにしておきましょう。

あゆみ

なんだか、逃げ得はゆるさん!って感じですね

杉山先生

あゆみさん感覚的にスルドイですね!
破産による免責は、払いきれない借金を払わなくて済むようにする制度なので
道徳上払わなければいけないものは、免責となりにくいということです。

任意売却後の自己破産はできます

さて、自己破産を申請したのにもかかわらず、債務が免責されない状態とはどういう状態なのか?
これが分かれば、「任意売却すると自己破産できなくなるのか否か」について分かります。

破産の決まりでは、全債権者平等に配当を得ること。という決まりがあります。債権者平等の原則といいます。
一部の人にだけ返済することを偏波(へんぱ)弁済と言います。

あゆみ

先生!偏波弁済なんて言葉、人生で初めて聞きました!

杉山先生

そうですよね。
普段生活している中では滅多に耳にすることはない言葉だと思います。
ちょっと次の図をご覧ください。

杉山先生

ケース1もケース2も偏波弁済になります。

あゆみ

ケース1は同じ金額返済しているのにですか?

杉山先生

はい、借金の総額が違うのに、同じ金額を払っているので、A銀行により多くの弁済をしていることになりますから偏波弁済です。

偏波(へんぱ)弁済』が焦点?

あゆみ

先生!
もしかしてこの相談者さんは、偏波弁済のせいで自己破産ができないと言われたのかもしれませんね。

杉山先生

あゆみさん今日は冴えてますね!
おそらくその通りだと思います。

不動産の取引についてあまり知識のない専門家の場合、マイホームを売って住宅ローンを返済すると偏波弁済に当たると勘違いしているケースがあります。
しかし、これは間違いです。

住宅ローンの場合、ほぼ100%抵当権という権利を不動産に付けています。
売却時、ローンを組んだ金融機関に優先して返済を行っていても、「偏頗弁済」にはあたりません。
抵当権は他の債権者に優先して弁済を受ける権利だからです。

しかし、注意が必要です。

レアケースですが、不動産を売却した結果、住宅ローンが全額完済できた場合。手元に残ったお金を前記のように他の債権者に偏って返済すると、、、

これは偏波弁済となります。
では、逆に債務超過状態ではどうなるでしょう。つまり、売却代金<住宅ローンの状態です。

住宅ローンの返済を優先しても偏波(へんぱ)弁済にはあたらない

債務超過状態(売る金額よりも、住宅ローンの残額の方が多い状態)で不動産を売却する場合、抵当権者である債権者の同意が必要です。
債権者は相場よりも安く売却することを認めません。
お金を返してもらう立場ですから、一般相場以上での売却以外、認めることはありません。

したがって、債権者の同意を得た上で、売却ができたのであれば、偏波弁済にはなりません。
そもそも債権者は、先ほど書いたように抵当権という権利を持っており、一般の債権者よりも優先して配当を受ける権利があるからです。

偏波弁済は債権者平等の精神に基づいて規定されていますが、抵当権者は債権者平等の適用を受けません。

POINT

  • 任意売却しても自己破産はできる
  • マイホームを売ったお金で住宅ローンを返済しても偏波弁済にはならない
  • 売却して手元に残ったお金を任意に他の債権者に返済すると偏波弁済になる可能性がある
  • 偏波弁済と認定された場合、自己破産はできても免責を受けることができない可能性がある

住宅金融支援機構(旧公庫)も任意売却を推奨しています。
ご覧いただければ分かりますが、どこにも、任意売却すると自己破産に支障があるとは書いてありませんよね。

単に「任意売却すると自己破産できなくなる」という専門家にはお気を付けください。
例えそれが日本最高峰の法律家であっても。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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