物件の売りやすさを決める流通性比率とは

流通性比率
あゆみ

みなさんこんにちは。アシスタントのあゆみです。
先生!
今回は専門用語の解説をしてくださるのですね。
宜しくお願い致します。

はい。
今回は、不動産査定や、不動産鑑定の際に出てくる「流通性比率」について学びましょう。

流通性比率とは、「売りにくさ」や「売れやすさ」を数値化したもの

結論から言うと、「流通性比率」とはどれだけ売れやすいか?

若しくはどれくらい売れにくいか?を数値化したものです。

もし流通性比率が0.95となっている場合、本来の査定額から5%減額したということになります。

あゆみ

「売れやすさ」や「売れにくさ」ですか、、、

杉山先生

はいそうです。
難しそうにお感じになるかもしれませんが、順番に解説しますね。

この流通性比率。
どのような要素があると流通性比率に影響があるのか?説明したいと思います。

宅地建物取引業法の規定には、「不動産会社が顧客に査定価格を述べる時は、その根拠を示さなければならない」と決まっています。

例えば、あるエリアの住宅地。そうですね。。。どの土地の面積も50坪前後あるところとしましょう。
50坪の面積の土地の価格平均は4,000万(坪単価80万)とします。
全体の区画数は500区画の大規模分譲地です。

その中にある一つの土地があるとしましょう。この土地の面積は200坪です。

さてこの200坪の土地の価格はいくらになるでしょうか?

あゆみ

相場が1坪80万なので、200坪×坪単価80万=16,000万!

杉山先生

正解!
と言いたい所ですが、実は違うのです。

あゆみ

え~!!!
まるで分からないです。

この場合、坪単価は80万よりも圧倒的に安くなります。
それは何故か?

このエリアの購入顧客層は、土地代で4,000万円程度です。
16,000万の予算がある人は、近隣地域の価格層が4,000万円の住宅地を好んで買いません。

あゆみ

確かに自分の土地が16,000万円で周りに住んでいる人が4,000万円では
価値観とか生活レベルとか全く違いますよね。

杉山先生

そうなんです。
不動産は「環境を買え」という言葉がある通り、周辺の住宅利用形態がどんな状態か?って結構重要なのです。

需要と供給のバランスで決まる流通性比率

この事例で言えば、4,000万円前後の購入顧客しかいないところに、16,000万円の不動産を売りだしても購入できる人が極端に少なくなる。だから、売りにくい→だから単価を安くする。

この調整弁となるのが「流通性比率」なのです。

あゆみ

なるほど~少し分かってきたような気がします。

杉山先生

はい。
少しづつで大丈夫です。これから先の話を知っていただくとより分かってきます^^

流通性比率が低くなる場合の事例とは?

あゆみ

質問です。
流通性比率が低くなってしまう不動産って他にどんなものがあるんですか?

杉山先生

この後、事例も踏まえて解説しますが、ざっくり言うとこんな不動産です。

流通性比率が下がってしまう不動産

  • 周辺の平均広さに比べて、著しく広い土地、狭い土地
  • 道路から極端に高低差がある土地
  • 事件、事故があった不動産
  • 土地の形状が三角形など不整形な土地
  • 間口(道路に接している面)が極端に狭い土地
あゆみ

なるほど、、、だんだん分かってきました^^

良かったです。
もっと分かってきますからね^^

あゆみ

質問です!
さっきの200坪の土地ですが、4つに分ければ50坪になって売りやすくなるのではないしょうか?

とっても良い質問ですね!!!

200坪の土地を4分割して50坪づつ売ったらどうか?
確かにそれができるならその方が良いでしょう。

但し、4分割にするということは、水道や下水、ガスなどを4件分道路から引き直す必要があります。
土地を分割する測量代も必要です。いくらかかるでしょうか?

あゆみ

想像もつかないけど、数百万円にはなりそうな気がします。

杉山先生

そうですね。
一概に言えませんが、1区画100万円なら400万。
150万円なら600万かかります。
200万なら800万です。

あゆみ

一つ一つは高く売れるかもしれないけど、その前にお金がかかるんですね、、、
全部売れるかも分からないし、売れ残ったら値引きしなきゃですよね。

杉山先生

なかなかスルドイですね!
それも事実ですが、しかし「そもそも」の問題があります。

宅建業の免許を持たない人は土地を分割して売ることができない

宅建業の免許を持たない人が敷地を4分割にしてそれぞれ違う買主に売ることは。宅地建物取引業法第12条により禁止されています。
つまり宅建業の免許を持たぬ者は、分割して売却できないのです。

あゆみ

ということは、自宅の庭先を第三者に売却するのもアウトってことですか?
初めて聞きました。

杉山先生

ご自宅の庭先を1区画だけ第三者に売却すること自体は、違法とはいえませんが、2区画にして2人に売却すると違法になる可能性が著しく高まります。

あゆみ

安易に土地を分けて売ろうとは思わない方が良さそうですね。

宅建業の免許を持たない人が土地を分割して売却してはいけないことは、不動産業に従事している人でも意外と知らない人がいるので注意が必要です。

あゆみ

先生!
今までは土地のお話しでしたが、マンションでも流通性比率ってあるのでしょうか?

杉山先生

もちろんありますよ。
解説しましょう。

マンションの場合は周りの部屋の価格に左右される

60㎡の3LDKがメインの13階建てマンションがあったとしましょう。
1㎡メートル当たりの単価は50万。つまり1部屋3,000万円です。

もちろん階数が変わるごとに価格は変動しますが、ここでは平均と捉えてください。

1階から12階は60㎡の部屋がワンフロアに5世帯あります。

さてこのマンションの13階。
このフロアだけワンフロアぶち抜きで300㎡の部屋だとしたらどうなるでしょうか?
このようなイメージです。

マンションの流通性比率説明図
あゆみ

先生!
豆腐にしか見えないですが、マンションなんですね?

す、すみません(汗)
マンションとしてご覧ください

単純計算ですと、3,000万円×5部屋分の広さ=15,000万円と計算できます。
しかし、この部屋15,000万円では売れないでしょう。

何故か?
不動産を買いたい人は環境を買っているからです。
15,000万円出す事のできる人は、周りの部屋も15,000万円程度するマンションを欲しがる傾向が強いのです。

逆にこのようなマンションがあったとして60㎡の部屋。
どの程度、買いたい!とお感じになるでしょうか?

1部屋だけ小さいマンション図
あゆみ

うわ~
1人だけ狭い部屋で、なんだかバカにされそうで、私はちょっとイヤなかぁ。。。

杉山先生

先ほどの事例もそうですが、こんな極端なマンションはほぼありませんが、あゆみさんがお感じになったように肩身が狭いと感じるかもしれませんよね。

まわりの生活レベルと乖離があって、非常に居心地が悪いとお感じになるかもしれません。
一部屋だけ300㎡あるお部屋も、一部屋だけ60㎡しかないお部屋も、マンション全体の中では非常に売りづらいのです。

なんとなく見えてきたでしょうか?
売りにくいから、その分価格を下げる。
誰もが買いたいと思うからその分価格を上げる。
これが流通性比率です。

タワーマンションの角部屋は100%を超える

逆の例も挙げましょう。
タワーマンションの最上階角部屋。少なくて2部屋。
多くて4つ程度です。とても希少価値があります。

あゆみ

セレブな感じがヒシヒシして憧れます!
無理なく買えるなら欲しいです♪

杉山先生

そうですよね。
滅多に出ない物件ですから、それなりに高くても「ほしい!」と思いますよね。

このような不動産の流通性比率は。。。当たり前ですが100%を余裕で超えます。
稀少性というのですが、お金を出しても買えるとは限らない不動産程、流通性比率は上昇するのです。

ただ、後述しますが、流通性比率は査定の元となる、取引事例との比較もありますので、例えば取引事例が25階の角部屋、査定不動産が15階の角部屋だとすると、25階に比べれば、15階は一般的に「売りにくい」と言えます。従って100%を切ることもあります。

任意売却をする場合の流通性比率とは?

あゆみ

先生!
任意売却の場合って、流通性比率ってどうなるんですか?

杉山先生

任意売却にも流通性比率の考え方は適用されます。

まず、任意売却といっても不動産を売却することと同じですから、前述した通り、規模などの要素によって流通性比率を計算します。

任意売却の不動産の特殊性について流通性比率を考えるのはこの次です。

任意売却の多くは売却代金だけでは負債が払いきれない

任意売却の不動産は、大きく分けて売却時に「負債が完済できるもの」と「負債が完済できないもの」があります。

あゆみ

負債が完済できないと買主の方に来ちゃうんですか?

きちんとした不動産業者と不動産の名義変更を行う司法書士が仲に入って手続きすればその心配はありません。

一般の売却は、買主に引渡後に何か不具合があった場合、売主が保証する契約になっています。
例えば、「引渡しをした直後に雨漏りが発生」といった不具合が発生した場合です。

任意売却の場合の特殊事情に触れましょう。

多くの任意売却は、売却代金だけでは負債が払いきれません。
このような状態ですね。

オーバーローン状態の図
あゆみ

家を売る時に、住宅ローンは全部払わなくても売れるんですか?

杉山先生

本当は全額払わないと売ることはできないのですが、任意売却という特殊な売却方法なら、住宅ローンの全額を払わなくても売れます。
詳しくは、「任意売却とは?」をご覧ください。

売却しても全額返済に充てる事になりますので、売買が成立し、引き渡し後に保証しなければいけない事態が発生しても、保証ができない。ということになります。

あゆみ

確かに、手元のお金がないと、何かあっても保証することはできませんよね?

そうなんです。
だから、任意売却の場合、「保証を付けずに売却する」必要があります。

少し頭の運動をしましょう。不動産を売る立場ではなく買う立場になっていただきます。
例えば、同じ広さ、同じ値段で販売されている二つのお部屋。

  • アフター保証付きの不動産
  • 一切保証がない不動産

あなたが買主だとしたらどちらを部屋を購入しますか?

あゆみ

とーぜん、アフター保証付きの不動産です!

杉山先生

そうですね。
誰もが保証付きと答えるでしょう。

従って、保証なしの部屋はそれ相応価格を下げないとバランスが取れません。

負債が完済できない任意売却不動産の場合、保証を付けることができないことを勘案して、バランスを取る意味でこの場合も流通性比率を用いるのです。

一戸建てに比べてマンションは不具合が出る箇所が少ないので減価する割合は戸建ての方が多くマンションの方が減価割合が少ないです。
ちなみに、保証がないことによる減価目安は概ね5~10%です。

競売の流通性比率は30%減が多い

競売の場合、

  • どんな人が住んでいるか分からない
  • 内覧が事実上できない
  • アフター保証がない
  • 立ち退きを自分で交渉しなければならない
  • 不用品などを放置される恐れがある

こういった要素を勘案して、競売という特殊事情による流通性比率を決めますが、30%減とするケースが多く見られます。

あゆみ

先生!
競売を買う時って室内とかを見ることができないんですか?

制度的にはあるにはあるのですが、事実上できない。と思った方が良いです。

一言で言えば、考えられるリスクの分だけ、流通性比率を減価してバランスを取っているという事です。

流通性比率は取引事例の不動産と比べて高いかどうかでも決まる

不動産の査定は、過去に成約となった不動産の取引事例を元に、査定物件の想定売却価格を算出するというものです。

その為、流通性比率は、高ければ良い、引くければ悪いという単純は話ではなく、査定の元となる比較事例に対して、査定物件の立ち位置がどうなのか?という相対的なものです。

あゆみ

ようやく分かってきました♪
「今まで売れた事例と比較する」と「売却の前提条件」の両方から流通性比率ってきまるんですね!

まさにその通り!素晴らしいです!

余談ですが、取引事例が通常の不動産。
査定を出す不動産がいわゆるゴミ屋敷状態といった場合、「状態」による差を流通性比率を使って調整することもあります。

流通性比率100%でも、100%以外の数値でも要確認

不動産の査定書に「流通性比率」という項目が入っていた場合、その根拠を確認するようにしましょう。
先ほどの説明と重複しますが、100%未満なら悪い。100%だから良い、100%以上ならとても良い。という単純な話ではありません。

「今まで売れた事例と比較する」と「売却の前提条件」の両方から流通性比率は決まるのです。

LINEでシェア

この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
プロフィールをもっと見る
●この専門家に無料電話相談をする:TEL0120-961529※タップで電話かかります。