住宅ローンが残っている家を売却したい。手順や相談できる場所は?

あゆみ

こんにちは、アシスタントのあゆみです。
今回は、住宅ローンが全部払い終わっていない家は売れるのか?
について宅建士の杉山善昭先生にお聞きしたいと思います。
先生よろしくお願いします!

杉山先生

はいこんにちは。
よろしくお願いします。

住宅ローンは非常に長期のローンですから、何らかの理由で住宅ローン返済中に売却したくなる時、ありますよね。
この記事は「住宅ローンが残っている家を売却する方法」というテーマでご説明していきます。
住宅ローンを借りる時に不動産を担保として差し入れていることもあり、ローンを払い終わるまでは家を売ることはできない。と思っている方も多いと思います。
果たして、返済の途中でもうれるのか?売れないのか?解説していきます。

住宅ローンを完済しないと家を売ることができません

住宅ローンを完済しないと家を売ることができませんと書きましたが、正しく書くと

売却完了時に、住宅ローン全額を一括返済しなければならない

と言う事になります。

※参考:住宅金融支援機構「返済途中で住宅を他人に譲り渡すとき

「住宅ローンを全額返済し終わらないと売却できない」のではなく、売却時に全額返済できればOKと言う事になります。
仮に現在住宅ローンの返済が滞っていたとしても、完済することができばOKです。

完済のためにお金を都合する3つの方法

  1. 手持ちのお金で一括返済
  2. 売却代金を使って一括返済
  3. 売却代金+不足分を足して一括返済
あゆみ

1が出来る方ってそんなに多くいないような気がしますね。

杉山先生

そうですね。
実務では2が一番多かったのですが
昨今、3の状態になってしまっている方が急増しています。

3は不足分を出せるだけの金銭的余裕があれば良いのですが、不足分の数百万円、場合によっては数千万円をポンと出せる方は、現実問題としてかなり少ないのではないかと感じます。

住宅ローンは、不動産担保ローンと言われる商品で「不動産」という担保を提供する代わりに、お金を借りるシステムです。
抵当権という言葉は聞いたことがあるでしょうか?
不動産に抵当権という権利を付けることで、その不動産が住宅ローンの担保に入った事になります。

不動産を売却するということは、その担保が無くなることになりますから、売却後に不足分を分割で。。。という訳には残念ながら行きません。
こういった事情があり、不動産を売却する際には住宅ローンも精算する必要があります。

家を売ったお金で住宅ローンが返せない場合

前述したように、売却した金額で住宅ローン全額を支払うことができれば良いのですが、購入した時よりも相場が下がってしまい。住宅ローンの残高が売却可能価格を上回ってしまう事例が多発しています。

「売却代金」<「住宅ローンの残金」という状態ですね。

オーバーローン
あゆみ

先生!
不動産って資産になるから買っているイメージがあるのですが、
売れる金額の方が低いってまったく逆になってますよね?

杉山先生

そうなんです。
「資産」だと思い込んで買ったら「負債」だったという事例
そこかしこにあるのです。

売った代金だけではローン全額支払うことが出来ない場合、どこかから不足分を調達してくる必要があるのです。
不足分を出すためには・・・

売却不足分を出す方法

  1. 預貯金から出す
  2. 親から借りる
  3. 生命保険の解約、株の売却など
  4. 買換先の住宅ローンを多めに借りる
  5. フリーローン等を使って調達する
  6. 退職金の前借
あゆみ

生命保険って知らない内に結構溜まっていそうですね^^

杉山先生

そうです。
生命保険は隠れた財産ともいわれますが、意外と盲点だったりします。
一例として、日本生命の貸付金ページをご紹介しますが、各社で同様のサービスがあります。

不足分が多額な場合、使いにくいですが、100~200万円程度なら銀行の商品で「使い道自由な融資」を使う手もあります。

これを利用して不動産を売却する方法もあるのです。
家を売るのに借金をして!?と思う方がいらっしゃる方もいるでしょう。
筆者も過去一人だけ、不足分を借り入れして自宅を売却した経験を持っています。

住宅ローンを完済しなくても売却できる方法

あゆみ

先生!
さっき住宅ローンを完済しないと売れないと言っていたじゃないですか?
ウソはダメですよ!ウソは!

杉山先生

まあまあそんなに興奮しないで^^
世の中には原則があり、その後ろに特別な方法があるのは常です。
原則から説明せず、特別な方法から説明したら混乱するだけですから原則から解説したのです。

先にお伝えしておきますが、この特別な方法は、誰でも無条件で使える手法ではないという事をまず覚えておいてください。

一般的な不動産売却は、住宅ローンの残額を一括返済しなければいけませんが、特別な売却方法なら、住宅ローンを一括返済しなくても不動産を売却することが可能です。

その1.任意売却

任意売却なら「不足分の用意」も「経費の用意」も不要です。
「いまいちピンと来ない。」という方の為に図で説明しましょう。

売却可能な価格で不動産を売却し、返済できるだけの金銭を銀行に返します。
これが任意売却です。

未払い金額
あゆみ

なるほど、売れたお金で返せるだけ返すのですね!

杉山先生

そうです。
可能な限り高い値段で売却し、返済できる限り返済する。
返しきれない住宅ローンは分割して返済する等の方法があります。

任意売却なら不足分を手元から出さなくても、良いと書きました。
だからと言って、勝手に売れるのかというとそうではありません。

住宅ローンは有担保ローンですから本来全額返済なしに売却をすることはできないのです。
本来できない手続きをするためには、債権者の同意が必要になります。

債権者の同意を得るには、不動産の査定を作成し債権者と販売価格、返済金額についての協議をすることになります。
コンセンサスを得て一つ一つ手続きを慎重に進めることが重要です。

あゆみ

確かに。
借りている人が好き勝手に売却できてしまったら、お金を貸している人は困ってしまいますもんね、、、

杉山先生

そうです。
抵当権という権利を持っているので、債権者の意向を無視して勝手に進めることはできません。

債権者も人間ですから、こちらサイドに一方的に都合の良いことばかりを要求すると理解していただけません。
誠意をもって取り組む姿勢が必要です。

住宅金融支援機構をはじめ各金融機関で任意売却を推奨しています。
※参考:住宅金融支援機構「融資住宅等の任意売却

その2.家やマンションを貸す方法

売却する方法に入れる項目に「貸す」ことを書くと少し混乱するかもしれませんが、返済が厳しい状態なら人に貸して家賃を取ればよいのでは?と考える方もいらっしゃると思いますので解説しておきます。

あゆみ

確かに!
返済が苦しいなら人に貸して、貰った家賃で返済すればみんなハッピーですよね?

杉山先生

それができれば、確かにハッピーなのですが、そう行かない事情があるのです。

住宅ローンを利用して購入した家は、返済中に人に貸してはいけない。というルールがあるのです。

「そんなこと初めて知った!」と思う方も多いと思いますが、住宅ローンの契約書である「金銭消費貸借契約書」にシッカリ記載されています。

銀行に黙って人に貸してしまうと、銀行はいつでも「残っているローンを一括でいますぐ返済してください」という権利が発生します。

金利の高い事業用の融資に借り換えを要請されることもあります。

いずれにしても、大ダメージが起きえます。「知らなかった!」では済まされないのです。

売却をする際に注意すべき不動産会社の特徴

次は、売却を依頼する際に不動産会社を選ぶことになりますが、注意する点です。

あゆみ

看板が大きい有名な所が安心なんですか?

杉山先生

不動産会社は世の中にたくさんあるので、会社の大小だけでなく、注意して選択しないと後悔する事になりかねないので注意しましょう。

不動産を売却するのだから不動産屋さん。とすぐに頭に浮かぶかもしれません。
しかし、不動産業という中に「ジャンル」「系統」という区分けができます。
この章では、ジャンル別不動産会社の特徴について解説していきます。

不動産一括査定の特徴

不動産一括査定というサービスがあります。
自分が所有している不動産の情報を入力するだけで複数の不動産会社から査定が受取れるという便利なものです。

正しく言うと一括査定サービスを展開している事業者は不動産会社ではありません。
不動産を売却したい人をネットで集客する「サービス提供会社」です。
査定希望者を募集し、査定の申し込みがあると、加盟している不動産会社に査定希望客の紹介をします。

この時に、紹介された不動産会社は査定希望者1件当たり、1万円から3万円程度の紹介料を運営会社に払います。
査定希望者を紹介するだけなのに結構高額です。

あゆみ

えっと・・・
不動産を売りたい人を不動産会社に提供して、お金儲けをしている会社ということですか?

杉山先生

お金儲けというと少々悪意がある表現になりますが、
「不動産売却を希望する人を会員に有料で提供するビジネス」ですね。

あゆみ

ということは、その会社には不動産が売れても売れなくてもお金が入るといことでしょうか?

杉山先生

はい、その通りです。
一括査定サービスを提供している会社にとって、不動産が売れても売れなくてもどちらでも良いという事になります。

高額な紹介料を払って、売却希望者の情報を入手した不動産が会社は、どうするでしょうか?
なんとしても、不動産売却の依頼を取り付けたいと考えます。

あゆみ

競争が起こって高い査定金額が出るなら、依頼者にとってもメリットあるじゃないですか♪

杉山先生

一般的な不動産会社が出す査定は、買取査定ではなく「一般市場査定」なのです。
つまり、売れる保証がなく、このくらいで販売に出したらいかがでしょうか?というに過ぎないのです。

高いお金を払って見込み客の情報を購入している為、実現不可能な金額で査定を出す傾向が強くなります。
成約不可能な金額であっても、販売活動をして、頃合いをみて「売れませんね。金額を下げましょう」と所有者を説得するのです。


根本的な話をすると、複数の不動産会社に査定を依頼しても意味がありません。
何故なら、不動産会社が査定を出す際に使うデーターベースが全社同じだからです。

杉山先生

不動産会社が使う共通のデーターベースについてはこちらの役立ち記事で解説しています。

不動産流通の仕組みでも解説している通り、元のデーターベースは同じで判断だけが違うに過ぎません。
表現が適切ではないかもしれませんが、しょせん競馬の予想と同じレベルです。

無理やり傾向を言うならば、一括査定で出された金額から、マイナス10%~20%程度低い金額が実際に売れる金額だと思っておけば良いでしょう。

ネット系不動産会社の特徴

最近台頭してきたネット系不動産会社。マクロな流れで言うと、ネット系の金融機関や証券会社が続々と設立された後、不動産業界にもネット系が増えてきました。

基本ネットでやるので、低コストなどをうたい文句にしていますが、注意する点が必要です。
ネット系の傾向として、急激に会社が大きくなるので人材の成長が間に合わないという傾向が強いことです。

あゆみ

私の同級生もワンルームの投資不動産会社に入って1週間で営業の現場に出されたって言ってました。

杉山先生

同様の話は枚挙にいとまがない位あります。
営業マンは見込み客を見つけるだけの役割で、後は上司がクロージングするというパターンですね。


特に、任意売却の業務は一般の売買業務のスキルがなければ絶対できません。

販売を知らぬものが、任意売却業務ができるはずありません。
ところが、会社が急激に成長すると不慣れな人材でも現場に出さざるを得ません。

何かトラブルがあっても充分なサポートを受けることができないことは、格安携帯の世界でも常識です。ネット系の不動産会社でも同様です。

大手の不動産会社の特徴

会社の大きさ、知名度という意味では一番頼みやすい不動産会社だと思います。

大手不動産会社の営業展開は、「このエリアで探しています」という広告です。

毎日のように投函されているのを見ると「ウチの物件も高く売れるのでは?」と勘違いしてしまうのも無理はありませんが、言わずもがなでNGです。 関連記事をご覧ください。

ランキングサイトの特徴

一番信用しては行けないウェブサイトです。

アフィリエイトという言葉は聞いたことがあるでしょうか?

アフィリと略されることが多いのですが簡単に言うと、任意売却を希望する人をネット上で集め、特定の会社(任意売却会社)に紹介することによって報酬を得ているのです。

ビジネスモデルは、不動産一括査定サービスと同じです。
アフィリエイトのウェブサイトの特徴としては、誰が書いているか分からない、分かりにくいという点です。

こんな記事が載っているのはアフリエイトサイトの可能性大

  • 任意売却の体験談を載せ〇〇さん(任意売却会社)にお願いしたらうまく行きました的な記事
  • 任意売却ができる会社のまとめ
  • 任意売却会社の口コミランキング

というような内容でウェブサイトが構成されています。ステマという言葉が一時流行りましたが、その典型的なものです。

あゆみ

口コミって結構見てしまうのですが、ウソってことでしょうか?
ショック。。。

杉山先生

口コミが全部ウソってことはないと思いますが、読んでいて出来過ぎた口コミを見ることは多々あるのも事実です。
あまりアテにできないと思っていたほうが良いです。

前述した団体と同じで、任意売却業務を自ら受注するのではなく、紹介でフィーを得るビジネスモデルですので何かトラブルがあっても一切責任を取りません。

任意売却会社の選び方

では次に、不動産の売却の中でも特殊な「任意売却」について解説していきましょう。

任意売却を依頼する不動産会社は、言うまでもなく正規の宅地建物取引業者であるか?ということですが、ホームページで任意売却がメイン業務だと書かれているかどうか?

まずはココを見てください。

あゆみ

「任意売却をやっている会社」と「任意売却もやっている会社」
確かに断然、前者の方が信用できそうですね!

杉山先生

はい。
任意売却「も」やっている会社は、次いで感が否めません。

他にもありますので、よく覚えておいていただければと思います。

任意売却依頼会社チェック表

任意売却相談団体の特徴

任意売却の相談ができる、一見、公の団体?と思ってしまう事業者がいます。

  • 任意売却〇〇〇番
  • 住宅ローン返済〇〇センター
  • 任意売却〇〇協会

任意売却を支援する公的な団体は、現在ありません。

一般社団法人を名乗っている所もありますが、現在の一般社団法人は利用者側の立場からは株式会社と何ら変わりません。
これらの「いかにも公の団体を名乗った団体」の何が問題かというと、その団体自体が宅地建物取引業の免許を持っていないという所です。

ではなぜ、宅建業の免許がないのに、公の団体に見えるような組織を作って活動しているのか?

その答えは「集客しやすいから」です。

あゆみ

私知ってます!
ミルグラム効果といって、公のものや権利がある人の言う事は、内容に関係なく信じてしまうっていうやつですよね?

杉山先生

よくご存じですね!
株式会社よりも、社団法人や、●●センターと名乗った方が安心感があり、問い合わせのハードルを低くすることができるのです。

これらの団体の目的は不動産一括査定サービスと同様に「任意売却を希望する人を不動産業者である会員に紹介するビジネス」です。

任意売却の実務をするのは、加盟金、毎月の会費を払っている不動産屋さんの会員です。
任意売却の業務は依頼者と実務を担う会員(宅地建物取引業者)の間で契約を結びますから、何かトラブルがあっても、団体自体では責任を取りません。

実は、これらの団体は会員である不動産会社が集客を容易にするため作っていることも珍しくありません。

こういった団体に依頼してもよいかどうか?を判断する一番簡単な方法を書いておきます。

会社概要を確認してください。そのサイトの運営会社が記載されています。
その団体名で宅地建物取引業の免許を取得しているかどうか?
若しくはその運営会社が宅建業の免許を取得しているかどうか?必ず確認してください。

デメリットも伝えられる不動産会社を選ぶ

任意売却は誰でもできる方法ではありません。
また、魔法のように借金を消す方法でもありません。
メリットがあれば、デメリットもあるのは当然の事です。

あゆみ

確かに!
うまい話しだけをする人って信用できないですよね。

杉山先生

そう、世の中にはメリット100%の話はありません。
想定されるデメリットもしっかり説明してくれる会社に依頼することが大切です。

お金で釣る不動産会社は除外する

任意売却をしようとしている人は、住宅ローンの支払いが出来ず金銭的に困窮している方が圧倒的多数です。
そこに目を付けた一部の任意売却不動産会社は、「お金で釣る営業行為」をしています。

具体的には、成約の方に現金●●万円プレゼント!といった訴求です。

しかし、不動産を売却しても住宅ローンが全額払えないのに、債務者の手にお金が残るような売却を認めるはずがないことは火を見るよりも明らかです。

自分だけではどうしたら良いか分からない時は・・・

自分が置かれている状況で本当に任意売却ができるのか?
もっと良い解決方法はないか?など、自分自身はどうなのか?
あなたがお知りになりたいのはそこではないでしょうか?

任意売却や競売、自己破産などについて独学で勉強することはとても素晴らしいことです。
しかし、そのための時間を取るのは大変ではないでしょうか。
また、勉強して考えても正しい結論が出る保証はどこにもありません。

「専門家に相談する。」という方法が最も近道です。

任意売却の最大の特徴は、手元からお金を出さなくても売却が可能になる。という点です。しかしそれが誰にでも無条件にできる訳でもありません。
私達はあなたが置かれている状況を診察した上で、最適なアドバイスやサポートをすることができます。
もちろん任意売却の実現かどうかの判断もです。

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この記事を書いた専門家

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士杉山善昭任意売却の専門家
(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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