共有不動産、税金未納で差し押さえされた場合の対処法
先生今日は私からの相談をお願いします。
離婚した友達がいるのですが、相手側が税金払っていなかったらしく、差押えられちゃったんです!
もうパニックになって大変なんです。どうしたら良いですか?
それは大変ですね!
では今回は共有不動産の差押えについて解説していきましょう。
例えば二人で共同で所有している不動産。
ご主人の持ち分が10分の6、奥様の持ち分が10分の4という共有の場合を考えてみましょう。
もし、ご主人が払わなければいけない税金(今回は住民税としましょう)を滞納していた場合どうなるでしょうか?
サラリーマンの場合、住民税は給料から天引きされていることが圧倒的多数ので未納はないと思いますが、副業をしていて住民税の特別徴収を選択している方や、個人事業者などは個別に納付ですので、ついうっかりと言う事があると思います。
住民税は地方税です。地方税法について、詳しく知りたい方は総務省:地方税法のページをご覧ください。
住民税を滞納していた場合、ご主人の権利である10分の6だけを差押えることができるのか?
それとも、奥様の分まで含めた不動産全体を差し押さえることができるのか?
あなたはどちらだと思いますか?
このページの目次
差押えられる不動産は、相手の権利だけ
正解は、「ご主人の権利である10分の6だけです」
え?
私の友達の権利は大丈夫ってことですか?
その通りです。
相手が滞納している所得税や住民税について、こちらは払う必要がないのですから、差し押さえられることはありません。
共有者の共有持分が差押さえられたら何が起きるのか
市役所が差押えできる不動産は、ご主人の権利についてのみです。
すなわち、全体の6割の権利についてのみです。
但し、固定死産税の場合は連帯納付義務があるので扱いが別になりますので、後述します。
差押えの際、あなたに事前通知はありません
市役所はご主人の未納税金回収のため、所有している不動産を差押えることができます。
更に言うと、不動産を差押える場合、元主人の承諾もご相談者さんの承諾も必要ありません。
市役所は通知をすることなく勝手に差押え行うことができます。
差押さえられた共有持分のみが売却されてしまうリスク
さて、このまま元ご主人が税金を払わない場合、どうなるでしょうか?
市役所はご主人の持分(6割)のみを公売という手続きで売却することができます。
公売とは、公に売るという字のごとく、強制的に売却して税金に当てることです。
公売手続きをするために、ご主人の承諾も奥様の承諾も不要です。
但し、前述した通り公売にかけるのは、ご主人の持分(6割)だけです。
先生6割だけ売りに出したって買う人なんている訳ないですよね?
そう思うのも無理はないですが、実はいるのです。
ここまでお読みになって「6割だけ売りに出したって、売れる訳ないよね?」
とお感じになるかもしれません。
確かに、不動産について一部分の権利だけ購入しても、自由に使う事はできません。
民法には、不動産の全部に対して、持ち分に応じた使用をすることができるという条文があります。
民法第二百四十九条
出展:e-GOV
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
例えば、持ち分が12分の1の場合、1年に1か月だけその不動産を独占的に使うという「期間」で分類することもできるのです。
誤解されやすいですが、多数決で売却の可否を決めることはできません。
話を元に戻しましょう。
不動産について自分の共有持ち分だけを売却することはできるのか否か?
もちろん売れます。
では共有持ち分だけを購入した人はどうなるでしょうか?
6割の権利を購入した人は、相手方と共有状態になります。
前述した通り、民法では不動産の共有者は、その権利に応じて不動産を使用できると決まっています。
すなわち、6割の権利分使うことができるのです。
もし、片側だけがその不動産に住み使用しているとすれば新しい買主の権利を侵害しているとも言えます。
問題はそれだけではありません。
共有物分割という伝家の宝刀
共有持分だけを購入した買主は、「共有物の分割請求」という要求をすることができます。
共有状態になっている不動産を分割せよ。という請求です。
大きい土地なら権利に応じて分割することも可能ですが、小さい土地やマンションの一室などは分割することは困難ですよね。
その場合、不動産を売却して、権利に応じた金銭を受け取るという方法があります。
察しの良い方は気が付きましたか?
手間はかかりますが、共有持ち分を購入した買主は換金手段があるのです。
普通の考えでは6割の権利なんて売れないのでは?と思いがちですが6割の権利でも、上記の目的で購入する人が一定数います。
儲けるために買うんですね。
先生!
やっぱり私の友達も相当マズイ状態ってことですよね?
そうなんです。
共有不動産で自分の権利だけにしか差押えがついていないので、「安心」ということは残念ながらありません。
差押さえられた理由が<固定資産税の未納>の場合の対処法
次に、固定資産税の未納による差押についても解説をしたいと思います。
固定資産税も住民税の滞納と同じように、持ち分の割合だけなのでしょうか?
実は違います。
共有の不動産の固定資産税は連帯納付義務という義務があり、共有者は連帯して納付をしなければならないという規定があります。
地方税法第十条の二
出展:e-Gov
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
つまり、自分の共有持ち分だけではなく不動産全体に対して差押えがなされ、未納が続けば不動産全体が公売の対象になってしまいます。
税金ではありませんが、マンションの管理費、修繕積立金も連帯納付義務となっています。
先生!早く対策を教えてください!
すみません。
では対策を解説しましょう。
さて、共有の不動産について差押えについて解説してきましたが、次は具体的にどういった解決方法、出口があるのか?解説をしますね。
様々な選択肢があります。
言うまでもなく、問題の根本が税金の未納ですから、払ってしまえば何の問題もありません。
払い方は、一括、分割、不動産売却、のいずれかです。
税金を一括で払う
未納税金を一括で払う方法です。
現実的には困難であることが多いですが、親族から金銭的援助、融資を受け、納税する事例もあります。
また、金融機関の借り入れをして一括で納税する方法もありますが、この場合税金の納期に遅れてしまうと借入が困難になります。
未納状態になる前に金融機関に相談することが望ましいです。
税金を分割で支払う
一括納付ができない場合、分割納付が現実的です。
滞納者の多くが選択する方法で、私自身も役所の納税課に行くと、毎回窓口で分割払いの相談をしている光景を目にします。
分割払いで重要なポイントが三つあります。
税金分割払いのPOINT
- 他に財産がないこと
- 分割払いの計画が現実的であること
- 分割払い期間が年度をまたがないこと
特に役所は、年度またぎを嫌がります。
何故なら、年度が替わればまた新しい税金が発生し、未納金額が増えてしまうからです。
また、分割払いの話ができることと、差押えをしないことはイコールではない。という点です。
関連記事1:固定資産税は分割して納付することができるのか?
関連記事2:税金の分納していても差押えする理由
不動産全体を売却
納付をすることが困難である場合、不動産の売却を選択する事になります。
大きく分けて、公売で法的に売却をする方法と任意に売却をする方法になります。
公売で売却する場合、自分自身では何もする必要がありません。全て行政側がやります。
一見、手間なしのような印象があるかもしれませんが、廉価で売却される可能性もある点には注意が必要です。
実際、公売情報を掲載しているKSI官公庁オークションでも、公売の魅力として「掘り出しものがいっぱい」という表現がされています。
先生!
相手が「売却に賛成してくれない場合は売れませんか?」
全体を売却するのでしたら相手の同意が必要になります。
こちらの記事も参考にしてみてください。
参考記事1:共有者が協力してくれない任意売却
参考記事2:不動産の共有者が行方不明な場合の任意売却
差押さえられた理由が<住宅ローンの滞納>の場合の対処法
この話は、ポッドキャストで配信しているのでさわりだけ解説していきます。
住宅ローンを一括で払う
言うのは簡単ですが、実施するのは難しいかもしれませんが、方法論なので挙げておきます。
住宅ローンの支払いが止まって差押えされているのなら、その原因となる住宅ローンを一括で返済すれば差押えは解除されます。
税金の考え方と同じです。
住宅ローンの支払いプランを変更する
毎月の返済が厳しいなら、返済額を抑えた支払方法にすることも方法論としては考えられますが、差押えられた後に支払プランを変更することは、ほぼ無理です。
プラン変更する場合は、支払が遅れる前に手続きをすることが必要です。
住宅を売却する
こちらも税金の解説の所と同じとなります。
大きく分けて二つの売却方法があります。
1、自分の持ち分だけを売却
相手の同意を得ずに不動産を売却できる方法ですが、持ち分だけの売却の場合、相当な廉価になってしまう可能性が高い為、「そもそも住宅ローンが返済できるか?」という問題も発生します。
安い理由は共有持ち分だけを購入しても使用に制限があることや、共有物分割請求裁判をしなければいけない可能性が高いからです。
参考記事:共同所有の不動産、自分の権利だけ売る方法
2、全体を売却
全体を売却することができれば、持ち分だけの売却に比べ不利なことがありませんので通常の価格で売却することができます。
但し、相手の同意を得る必要があります。
先生。
どちらにしても、自分で売却するのはなかなか大変ですよね?
その通りです。
差押えられてるという事は時間的リミットもありますし、
無駄なく寄り道なく、スムーズに売却する必要もあります。
そうなるとやはりプロに頼む方法が一番安全です。
差押えが強制執行された場合の対処法
相手の持分を買えば住み続けられます
そのままにしておくと、公売や競売という手続きで不動産を売却されてしまいます。
解決方法の一つとして、相手の権利を購入するという手段があります。
但し、購入代金で相手の負債が払えるか?という点には注意が必要です。
共有持分を持ち続けることはリスクが高い割に、価値は低い
この記事の主旨と若干逸れますが、共有不動産を持ち続けることについても触れておきます。
固定資産税の連帯納付義務などがあり、負担は多い傾向があり、リスクは高い。
一方、共有不動産は持ち分だけを売却することができますが、全体ではなく持分だけの売却は通常以上に低い価格になってしまいます。
つまり「価値が低い」と言えるのです。
結果、リスクがあるのに、価値は低く、持ち続ける意味が見出しにくいと言えるのです。
共有持分が差押えられたらプロに相談
共有不動産が差し押さえられた際のまとめに入りましょう。
差押えられる原因となった債務の種類、連帯保証人になっているのか否か、共有持分割合等、複数の要素によって、ベストな解決方法が変わるのです。
従って、「まずは専門家に相談」というのがベストな対応方法となります。
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この記事を書いた専門家
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(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMヨコハマ、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演。単に家を売るだけでなく「お金に困らない暮らし」を提案している
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